ペンギンの夜
文字数 2,000文字
長く隠れていないものは3つある。
「太陽」と「月」と「真実」だ。
紀元前に、お釈迦様が言った言葉だ。
俺もそう思う。
この3つは確かに人間界のnot hidden だろう。
だか、お釈迦様、どうして俺には他にも3つを追加で下さったのですか?
そう、俺には長く隠れていないものが3つある。
「残業」「念力」「ペンギン」
俺の名前は真田一朗。36才。会社員。
今日も残業と言う合法的な制度のもと、夜10時の今も帰ることが出来ずにいる。
家に帰りたい。そして、帰りがけに温かい弁当を買って、暖かく眠りたい。
いけない。また、俺の心の叫びがあがってしまった。カウントが始まってしまう。
確か今のでカウント7つ目。いや、眠りたいを入れると8つ目だ。残り2つ。
落ち着け、俺。
さっ、目の前の仕事を終わらせるんだ。
そして早く帰るんだ、って俺、また心の中で叫んじまった。
残り1つ。
やばい。
無心になるんだ。
俺には特殊な能力がある。
残業中に心の叫びが10個になると、ペンギンに変身すると言う念力だ。
さすが俺。って、なんでこうなった?
思い返すと、かつて流行ったスプーン曲げの動画を残業中に携帯で見た。
俺にも出来るかな?なんて、小学生みたいにピュアな気持ちで目の前にあったペンギン人形を見ながら念力を送ってみた。
「ペンギンになれ、ペンギンになれ・・」
それを10回言ったのだろうか、ペンギンになっていた。
嘘みたいなホントってあるもんだな。
って、感心している場合ではない。
ペンギンの姿になると、俺は小さくなる。
その姿は水族館にいるようなリアルペンギンではない。
例えて言うと、なんとかファミリーみたいなfairyでcuteなペンギンだ。
この姿になったら、朝日が上るまで俺は人間に戻れない。ツライ。
さ、俺の一身上の不遇なんてどうでも良い。
今日は穏やかな気持ちでパソコンを閉じよう。
そして、なにも考えずにオフィスを出るんだ。
パタン。よし、机の施錠オッケー。
俺は無心で出口に向かう。
あれ?誰かの声がする。
この声は部長?それと、、同期の鈴木さん?
やばい、なんかよく分からないけど隠れなきゃ!
と思った瞬間、念力10個目達成。くそっ。
俺はペンギンになった。
「あれ?誰かいるか思ったけど、いないのか?また真田か?あいつ、施錠もしないで帰って。
ほんとダメ社員だな。オドオドして。鈴木さんを見習って欲しいよ」
散々な言われようだな。
俺は今、誰がみてもかわいいペンギンだぞ。口を慎め。
ん、でもこの2人、なんで会社にいるんだ?
さては不倫か?
やるな鈴木さん。通りで同期の中で一番出世が早いわけだ。
俺はペンギン歩きで2人に近寄った。
歩く時、これまたキュートにペコペコと足音がなる。
鈴木さんが、足音に気づいたようだ。
「部長、何か聞こえませんか?ペコペコって。イヤだ、やっぱりあの噂、本当なのかしら?」
「噂ってなんだい?」と部長。
おい、下心があるのか、汚い鼻の下が伸びて更にキモイぞ、お前。
「たまに、深夜のオフィスで電気がついたまま、ペコペコと足音がするそうなんです。それで、オフィスを調べても誰もいないそうで。。防犯カメラで見ても、何も映ってないそうですよ。ただ、、」
「ただ、何だね?」
「その、防犯カメラには小さな何かが動く影が毎回映るらしいんです。なんというか、砂からヌッと出てくるチンアナゴみたいな」
おい、チンアナゴって何だよそれ。
俺はかわいいペンギンだぞ。謝れ。
俺はムカついて、部長の肩に飛び乗った。
ちなみに、俺は飛行能力がある。
つまり、空飛ぶペンギンだ。すごいだろ。
そして、部長の肩に仁王立ちして、鈴木さんに俺のかわいさを見せつけてやった。
「ぶ、部長・・肩に何かが乗ってます、、、ぺ、ペンギンの人形です。こちらを見てます、、」
かわいいだろ?
俺は鼻高々に、部長の肩の上でポーズをキメた。
あれ?鈴木さんが走って逃げていく。
俺と部長はキョトンとしてその場に立ち尽くした。
部長が恐る恐る自分の肩に目を向ける。
お、ようやく気が付いたか、このエロオヤジ。
俺はよぅ!っとかわいい手をちょこんと上げて、礼儀正しく部長に深夜の挨拶をした。
部長はキャーと女子のような甲高い悲鳴を上げて、俺を振り払って逃げて行った。
俺はオフィスの床に落ちて、一人天井を見上げた。
あーあ、今夜も会社に泊まりか。
寝心地悪いんだよな、ここ。腹減った。
このまま寝るか。
ん?あれ?身体がもとに戻ってるぞ?
俺は朝日を浴びることなく、ペンギンから人間に戻った。
どうやら俺の念力は、人間に姿を見られたら失う能力らしい。
こんなことなら、もう少しペンギンLifeを楽しむべきだった。
俺は、ヨイショと立ち上がった。
翌日から、我が社は深夜までの残業は禁止となった。
遅くとも20時には帰宅する制度となり、労務環境が改善された。
俺は健全なサラリーマンとなったが、なぜか真田ペンギンと言われるようになった。
まっ、俺がかわいいからだろうな、きっと。
「太陽」と「月」と「真実」だ。
紀元前に、お釈迦様が言った言葉だ。
俺もそう思う。
この3つは確かに人間界のnot hidden だろう。
だか、お釈迦様、どうして俺には他にも3つを追加で下さったのですか?
そう、俺には長く隠れていないものが3つある。
「残業」「念力」「ペンギン」
俺の名前は真田一朗。36才。会社員。
今日も残業と言う合法的な制度のもと、夜10時の今も帰ることが出来ずにいる。
家に帰りたい。そして、帰りがけに温かい弁当を買って、暖かく眠りたい。
いけない。また、俺の心の叫びがあがってしまった。カウントが始まってしまう。
確か今のでカウント7つ目。いや、眠りたいを入れると8つ目だ。残り2つ。
落ち着け、俺。
さっ、目の前の仕事を終わらせるんだ。
そして早く帰るんだ、って俺、また心の中で叫んじまった。
残り1つ。
やばい。
無心になるんだ。
俺には特殊な能力がある。
残業中に心の叫びが10個になると、ペンギンに変身すると言う念力だ。
さすが俺。って、なんでこうなった?
思い返すと、かつて流行ったスプーン曲げの動画を残業中に携帯で見た。
俺にも出来るかな?なんて、小学生みたいにピュアな気持ちで目の前にあったペンギン人形を見ながら念力を送ってみた。
「ペンギンになれ、ペンギンになれ・・」
それを10回言ったのだろうか、ペンギンになっていた。
嘘みたいなホントってあるもんだな。
って、感心している場合ではない。
ペンギンの姿になると、俺は小さくなる。
その姿は水族館にいるようなリアルペンギンではない。
例えて言うと、なんとかファミリーみたいなfairyでcuteなペンギンだ。
この姿になったら、朝日が上るまで俺は人間に戻れない。ツライ。
さ、俺の一身上の不遇なんてどうでも良い。
今日は穏やかな気持ちでパソコンを閉じよう。
そして、なにも考えずにオフィスを出るんだ。
パタン。よし、机の施錠オッケー。
俺は無心で出口に向かう。
あれ?誰かの声がする。
この声は部長?それと、、同期の鈴木さん?
やばい、なんかよく分からないけど隠れなきゃ!
と思った瞬間、念力10個目達成。くそっ。
俺はペンギンになった。
「あれ?誰かいるか思ったけど、いないのか?また真田か?あいつ、施錠もしないで帰って。
ほんとダメ社員だな。オドオドして。鈴木さんを見習って欲しいよ」
散々な言われようだな。
俺は今、誰がみてもかわいいペンギンだぞ。口を慎め。
ん、でもこの2人、なんで会社にいるんだ?
さては不倫か?
やるな鈴木さん。通りで同期の中で一番出世が早いわけだ。
俺はペンギン歩きで2人に近寄った。
歩く時、これまたキュートにペコペコと足音がなる。
鈴木さんが、足音に気づいたようだ。
「部長、何か聞こえませんか?ペコペコって。イヤだ、やっぱりあの噂、本当なのかしら?」
「噂ってなんだい?」と部長。
おい、下心があるのか、汚い鼻の下が伸びて更にキモイぞ、お前。
「たまに、深夜のオフィスで電気がついたまま、ペコペコと足音がするそうなんです。それで、オフィスを調べても誰もいないそうで。。防犯カメラで見ても、何も映ってないそうですよ。ただ、、」
「ただ、何だね?」
「その、防犯カメラには小さな何かが動く影が毎回映るらしいんです。なんというか、砂からヌッと出てくるチンアナゴみたいな」
おい、チンアナゴって何だよそれ。
俺はかわいいペンギンだぞ。謝れ。
俺はムカついて、部長の肩に飛び乗った。
ちなみに、俺は飛行能力がある。
つまり、空飛ぶペンギンだ。すごいだろ。
そして、部長の肩に仁王立ちして、鈴木さんに俺のかわいさを見せつけてやった。
「ぶ、部長・・肩に何かが乗ってます、、、ぺ、ペンギンの人形です。こちらを見てます、、」
かわいいだろ?
俺は鼻高々に、部長の肩の上でポーズをキメた。
あれ?鈴木さんが走って逃げていく。
俺と部長はキョトンとしてその場に立ち尽くした。
部長が恐る恐る自分の肩に目を向ける。
お、ようやく気が付いたか、このエロオヤジ。
俺はよぅ!っとかわいい手をちょこんと上げて、礼儀正しく部長に深夜の挨拶をした。
部長はキャーと女子のような甲高い悲鳴を上げて、俺を振り払って逃げて行った。
俺はオフィスの床に落ちて、一人天井を見上げた。
あーあ、今夜も会社に泊まりか。
寝心地悪いんだよな、ここ。腹減った。
このまま寝るか。
ん?あれ?身体がもとに戻ってるぞ?
俺は朝日を浴びることなく、ペンギンから人間に戻った。
どうやら俺の念力は、人間に姿を見られたら失う能力らしい。
こんなことなら、もう少しペンギンLifeを楽しむべきだった。
俺は、ヨイショと立ち上がった。
翌日から、我が社は深夜までの残業は禁止となった。
遅くとも20時には帰宅する制度となり、労務環境が改善された。
俺は健全なサラリーマンとなったが、なぜか真田ペンギンと言われるようになった。
まっ、俺がかわいいからだろうな、きっと。