2:エアコンっていうのはなぁ……!
文字数 1,869文字
魔神がついと指を動かすと、床の上に広がっていたゲロあの日の思い出がたちまち消え失せる。
自分の意志でも使えるなら、それで吐き気を止めればよかったんじゃないか?
私はランプの魔神。名前はクァーニャだ。好きに呼べ。
まぁ馴れ合うつもりがないのならそれでもいいさ。
それじゃ早速俺の願いを叶えてもらおうか。
そのことなんだが、お前の1つ目の願いは『私がエアコンになること』で間違いないんだな。
正直、まったく意味がわからん。遠慮しているのなら構う必要はないんだぞ。
例えばこの国の総理大臣にすることだって可能だし、不老不死にすることだってできる。
今この時、俺が一番望んでいるのは。『お前がエアコンになること』だ。
クァーニャが指を鳴らすと、たちまちその体が色とりどりの光に包まれた。
見るもの全ての目を奪うような極彩の輝きの中で、クァーニャはくるくると舞うように動く。
やがて、その光も徐々に収束していくと、最後にエアコンだけが残った。
な、何が不満なんだ!
今の時代の最新モデルとくらべても遜色のない性能だぞ!
くそっ、お前に任せた俺が馬鹿だった!!
クァーニャ! いったん元に戻れ!
だからさぁぁぁぁぁ、俺は
幼女のエアコンが欲しいの!
見た目が幼女で、部屋を涼しくしてして欲しいの!! わかるか!?
あーーー、はいはいはい。察しの悪いクァーニャちゃんでもわかるように丁寧に説明してあげまちゅねー。
とにかく、変身とか要らん!
お前は見た目がツルペタだから基準クリア! そのままでOKだ!!
だ、黙れ! 人が気にしてることを……!
私だってなー、変身すればグラマラスになれるんだ!
あっあー、残念! それは本当の自分じゃない! アウッ!
ブチ切れたクァーニャの指から青い光が放たれた。それはまっすぐにガラへと向かって飛んでいき、そのまま命中する……かと思われた。
願いを全て叶えるまで、危害を加えることができないのを忘れてた……けろ。
魔法が跳ね返ってきただけだから何とでもなるが……むかつくな。
なるほどな。
ところで、そろそろ続きを話してもいいか?
まぁ簡単に言うと、だ。
お前はそのままの見た目で、エアコンとしての機能を果たせばいいんだ。何も難しいことはないだろう?
千年生きてきたが、ここまで難しい望みは初めてだよ。
さっきも電気屋の店員に『幼女の見た目のエアコンが欲しい』と言ったら泣き出してな。
そうしたらその店員がどうやら一帯で人気のアイドルだったらしくてな、何を勘違いしたのかファンが怒って追いかけてきたんだ。
だが、そんな苦労もこれまでだ! ようやく俺の部屋が涼しくなるんだ!
嬉しいなー、はははは!
(エアコンらしくってなんだよ……頭おかしいだろ……)
ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
おおおお! 涼しい!! くははは! 涼しいなぁぁぁ!!
ははーっはっはっはっは!!
ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
(よおおおおし、正解だったみたいだ……!)
ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
(…………………………………………………)
ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
(…………で、これっていつまで続ければいいんだろう……?)
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