積み重なる影の予兆
文字数 1,546文字
エルダール達は忌々しい存在として交わる事を拒むが、気性の荒い獣人達を束ね、エルダールの何倍もの速さで増えるアネールを間引く必要悪として、その悪行の一部は見逃されている。
そんな
ニフテリザは
無論、アネールを糧とする
鵺田がある筋から得た情報だとして望月の伝えたのは、悪質な
望月は亜人問題以前の刑事事件だと判断して刑事課に連絡を入れ、鵺田には何か情報を掴んだら自分を通して伝える様にと伝えた。
しかし、望月の仕事はこれで終わらなかった。早朝から始まったオーク掃討作戦が終わり、本庁の特別機動捜査隊が戻ってきたのだ。それも、問題となっていた
望月は呼ばれるまま、特別機動捜査隊の控室に向かい、本庁応援部隊の指揮を執っていた柏木隊長から話を聞いた。
それによると、現場で確認出来たオークはおそらく全て倒されたとの事だった。正確な数は把握出来ず仕舞いだったという。また、現場検証に立ち会う為、武寿賀は遅れて戻るとの事だった。
武寿賀も
柏木は周知すると言い、事後処理に向かった。草薙の事が気に懸かる望月は執務室に戻ろうとしたが、柏木と供に出動していた黒井が、気になるものを見たと望月を呼び止める。
曰く、彼は逃げ出したオークの追討に向かった時、其処に似つかわしくないものを見ていたのだ。
女である。彼はその女を呼び止めようとしたが、その女は突然姿を消し、足跡さえなかったというのだ。
「もしかしたら……オークがまとっていた
「おそらく。逃げ出した個体が一体くらいいるかもしれませんが、徒党を組んで民家を襲撃する事は不可能かと」
「そう……それじゃあ、あの連絡通路周辺の警戒は続くし、心配は無いと思います」
望月はあいまいな答えしか返せなかったが、黒井は特に気に留めた様子も無く、居住まいを正した。
「そうですか、では」
黒井が立ち去り、望月は時計を探した。
時刻は、正午を少し過ぎていた。