第8話 不審者

文字数 600文字

 太郎も日に日に大きくなり、もはや誰も彼を止められる者もいなくった。
 「太郎さんにも困ったものだっきゃ。」
 「んだ。何でも力ずくで決めるんだふんご。」
 猿や猪など、他の動物たちに一目おかれている連中も、太郎にはまったく頭が上がらなかった。

 「それなら、私が何とかしましょう。」
 知恵者のウサギがそういうとどこかに飛んでいった。
 「たぬきどん。太郎にひと泡吹かせてやりたかねえか?」
 ウサギは気のいい狸をそそのかすと里へと降りていきました。ちょうど通りかかった武将の一行に村人に化けた狸が話しかけます。
 「あの山に、金太郎という悪ガキがいて、毎日動物をいじめてるって話だよ。」
 「え?さっきは怪我をした動物たちの面倒を見る優しい少年だって聞いたぞ。」
 三人の武将たちは顔を見合わせます。
 「いやいや、相撲と称して、毎日動物たちを投げ飛ばす。そんで、怪我した連中を集めて、街に送り込むって話しだ。街じゃ、ろくに動けない動物を受け入れるために、大掛かりな改修を迫られてな。」
 狸は顔を隠すと、肩を震わせながら訴えた。
 「それは、聞き捨てなりませんな。一つ真相をたしかめに参りましょう。」

 一方、ウサギは太郎に怪しい連中が山にやってきたことを知らせた。
 「見るからに怪しげなやつらだ。刀や弓を持っているところを見ると、狩りをしにきたな。よし、ここはおらが追っ払ってやる。」
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