第2話
文字数 699文字
その後も謎のFAXは続いた。
『明日、上司に怒られる』とあると、どんなに注意を払っても、うっかりミスを犯して課長を怒らせた。もっとも普段から三日に一度は誰かしらに怒鳴られていたので、これに関しては偶然と言えなくもない。
『明日、お金を落とす』とあると、やっぱり落とした。この時は百円で済んだので、たいした被害ではなかったのだが、あまり良い気はしない。
この前なんか思わず胸がときめいた。『明日、添島(そえじま)ひとみに告白される』とあったからだ。添島ひとみとは会社の後輩で、以前から密かに思いを寄せていた女性だ。だが、彼女とはデートどころか、ロクに会話もしたことがない。
興奮で眠れないまま、ウキウキ気分で出勤すると、「先輩、昼休みに大事な話があります」と添島ひとみが神妙な面持ちで話しかけてきた。
期待に胸を膨らませて屋上に着くと、彼女は神妙な面持ちで待ち構えていた。
添島ひとみはためらいがちに、「実は……私、間違って大石課長の大事な書類を持って帰ってしまいました。どうしたらいいでしょう」と、ファイルケースを差し出してきた。
そっちの告白かいと肩を落とし、「判った。僕の方から返しておくよ」と、ファイルケースを受け取った。
その後、大石課長から大目玉を喰らったのはいうまでもない。
明日からのFAXは留まることを知らなかった。
“課長から褒められる”とあって期待していると「君、何となく鼻の形が良いな」と微妙な誉め言葉を貰い、“宝くじが当たる”とあると、喜び勇んで十枚三千円分買い込んだが、一枚だけ最低の三百円が当たった。“課長に奢ってもらう”とあると、自販機の缶コーヒーを奢ってもらった。
『明日、上司に怒られる』とあると、どんなに注意を払っても、うっかりミスを犯して課長を怒らせた。もっとも普段から三日に一度は誰かしらに怒鳴られていたので、これに関しては偶然と言えなくもない。
『明日、お金を落とす』とあると、やっぱり落とした。この時は百円で済んだので、たいした被害ではなかったのだが、あまり良い気はしない。
この前なんか思わず胸がときめいた。『明日、添島(そえじま)ひとみに告白される』とあったからだ。添島ひとみとは会社の後輩で、以前から密かに思いを寄せていた女性だ。だが、彼女とはデートどころか、ロクに会話もしたことがない。
興奮で眠れないまま、ウキウキ気分で出勤すると、「先輩、昼休みに大事な話があります」と添島ひとみが神妙な面持ちで話しかけてきた。
期待に胸を膨らませて屋上に着くと、彼女は神妙な面持ちで待ち構えていた。
添島ひとみはためらいがちに、「実は……私、間違って大石課長の大事な書類を持って帰ってしまいました。どうしたらいいでしょう」と、ファイルケースを差し出してきた。
そっちの告白かいと肩を落とし、「判った。僕の方から返しておくよ」と、ファイルケースを受け取った。
その後、大石課長から大目玉を喰らったのはいうまでもない。
明日からのFAXは留まることを知らなかった。
“課長から褒められる”とあって期待していると「君、何となく鼻の形が良いな」と微妙な誉め言葉を貰い、“宝くじが当たる”とあると、喜び勇んで十枚三千円分買い込んだが、一枚だけ最低の三百円が当たった。“課長に奢ってもらう”とあると、自販機の缶コーヒーを奢ってもらった。