7 帰る日

文字数 887文字

 この日、目をさましたリダンは、キリス・ギーと顔を合わせた。
「ふふん。おちびさん。あんたの心配事はわかってるぞ」
「帰りの道でも、おいしいものが食べたいんだろ?」
「えへ。まあ、そうです」
「そのことなら大丈夫じゃ」
 怪物の二つの頭はそろって、魔法を唱えた。リダンの手もとに、ふたのついたバルクが現れた。
「さあ、それを持っていきなさい。食事の時はいつも、バルク一杯に食べ物が入っているはずじゃ。もし全部食べてしまっても、次にはまた一杯になってるじゃろう」
「あの」
「ハハハ。それも大丈夫。飲み物も出てくるよ。君の好きなフロブルがね」
「ありがとう」
リダンは、にっこりした。
「それじゃ」
「あ、ちょっとまって。今、いい考えを思いつきました」
「何じゃね?」
「あなたたちに名前をつけてあげましょう、どうです! キリス・ギーさん?」
 怪物は、顔を見合わせた。そして、
「そりゃすばらしい! ぜひお願いするよ」とそろって叫んだ。
 リダンは、この思いつきに、自分でもぞくぞくしていた。まるで、いたずらでもするような顔で、しばらく考える。
「そうですね。右のトシトッタ話し方をするあなたには、トルーム」
 右の頭が、リダンの方を向いた。
「左のワカイ話し方をするあなたには、コーティ」
 左の頭が、まばたきをした。
「どうです?」
「うん、いい名じゃ」
「うん、いい名だ」
「トルームには、かしこい、という意味が、コーティには、元気な、という意味があって、どちらも昔の言葉なんです」
「すてきな名前をありがとう」
「君が、ちょっとばかり頭がいいのはわかってたよ。それにしても、これは最高の」
「そう。最高の贈り物だ」
「お前さんは、わしたちにとって」
「最初の友だちだよ」
 リダンは、笑ってうなずいた。そして、ぐっと腕をのばして、彼らの大きな手にふれた。
「それでは、さよなら。行きます」
「さよなら」
「ぶじに行けよ」
 リダンは、ふり返らなかった。そのまま、入ってきた時の坂を下りて行った。
 塔の出口が近づく。
 リダンは希望をこめて、外からの光を見つめた。
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登場人物紹介

リダン|大陸の旅人

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