トリニティその2
文字数 1,046文字
「あのねぇ、ふぅ。カトリックの聖職者は神父で、プロテスタントは牧師なの」
やんわりとした口調で太一郎が教えてくれる。そう言えば、ずっと、「俺のお父さん、牧師」と聞かされていた……。
「あー、そっかぁ……プロテスタントかぁ」
「そもそも、もぅがこの世におる時点でプロテスタントやろ」
一樹が顔も上げずに言う。
「な、なんで?」
「カトリックの牧師さんは結婚でけへんの! それぐらい知って……へんかったみたいやな」
憐みの表情まで浮かべる一樹に、僕は「うぐっ」と詰まったけど、太一郎はやけに嬉しそうだ。
「ふぅが英宣に行ったんやなぁって実感したわ。この調子でちょっとずつキリスト教の知識増やしてな!」
「うん、頑張る! それにしても、お寺や神社と違ってキリスト教って宗派がいっぱいあるんやなぁ」
一樹と太一郎の口がパカンと音がしそうなほど大きく開いた。
「キリスト教はカトリックとプロテスタントと正教、新宗教の4つが大きな宗派なんやろ? ほんで」
オリエンテーションで仕入れたばかりの知識を得意げに披露しようとしたら、一樹に「ストップ!」と大声で遮られた。
「お寺や神社と違って、宗派がいっぱいある……? ふぅ。仏教にもようけ宗派があるんやぞ。13宗56派ちゅうやろ」
「じゅうさんしゅ……う?」
これ見よがしに、一樹が大きなため息をつき、太一郎が口を挟む。
「13個の宗派があるらしいよ。神社かて、伊勢と出雲では宗派が違うし、それに八百万 っていうぐらいたくさん神さまがいたはるから、その神さま一人一人に宗派があるんと違うかな」
「やお、よろず……?」
「常識やろ」「授業でやらんかったっけ?」と散々言われ、僕のアホの子扱いは更に拍車がかかることになった。
仕方ないじゃないか。興味のあること以外、頭に入ってこないタイプなんだから――!
とりあえず、プロテスタントの学校に入って、毎日礼拝に出ていると知識は増える、はず。
はず、だったんだけど。
高校進学のお祝いでスマホを買ってもらってからずっと、ゲームをやったり、web小説、コミックスを読んでいたら、どうしても寝るのが遅くなる。
おまけに、早朝のSNS攻撃。
連日睡眠不足の僕は毎日の礼拝中につい、ウトウトして、左隣の小島先生には睨まれ、右隣の家須に肘でわき腹を突かれ、起こされている。
今日こそは。
僕は『三位一体』の額に心の中で宣言する。
今日こそは絶対に礼拝中に寝ませんから――。
やんわりとした口調で太一郎が教えてくれる。そう言えば、ずっと、「俺のお父さん、牧師」と聞かされていた……。
「あー、そっかぁ……プロテスタントかぁ」
「そもそも、もぅがこの世におる時点でプロテスタントやろ」
一樹が顔も上げずに言う。
「な、なんで?」
「カトリックの牧師さんは結婚でけへんの! それぐらい知って……へんかったみたいやな」
憐みの表情まで浮かべる一樹に、僕は「うぐっ」と詰まったけど、太一郎はやけに嬉しそうだ。
「ふぅが英宣に行ったんやなぁって実感したわ。この調子でちょっとずつキリスト教の知識増やしてな!」
「うん、頑張る! それにしても、お寺や神社と違ってキリスト教って宗派がいっぱいあるんやなぁ」
一樹と太一郎の口がパカンと音がしそうなほど大きく開いた。
「キリスト教はカトリックとプロテスタントと正教、新宗教の4つが大きな宗派なんやろ? ほんで」
オリエンテーションで仕入れたばかりの知識を得意げに披露しようとしたら、一樹に「ストップ!」と大声で遮られた。
「お寺や神社と違って、宗派がいっぱいある……? ふぅ。仏教にもようけ宗派があるんやぞ。13宗56派ちゅうやろ」
「じゅうさんしゅ……う?」
これ見よがしに、一樹が大きなため息をつき、太一郎が口を挟む。
「13個の宗派があるらしいよ。神社かて、伊勢と出雲では宗派が違うし、それに
「やお、よろず……?」
「常識やろ」「授業でやらんかったっけ?」と散々言われ、僕のアホの子扱いは更に拍車がかかることになった。
仕方ないじゃないか。興味のあること以外、頭に入ってこないタイプなんだから――!
とりあえず、プロテスタントの学校に入って、毎日礼拝に出ていると知識は増える、はず。
はず、だったんだけど。
高校進学のお祝いでスマホを買ってもらってからずっと、ゲームをやったり、web小説、コミックスを読んでいたら、どうしても寝るのが遅くなる。
おまけに、早朝のSNS攻撃。
連日睡眠不足の僕は毎日の礼拝中につい、ウトウトして、左隣の小島先生には睨まれ、右隣の家須に肘でわき腹を突かれ、起こされている。
今日こそは。
僕は『三位一体』の額に心の中で宣言する。
今日こそは絶対に礼拝中に寝ませんから――。