第22話 クローブへの個人指導
文字数 747文字
びっくりするクローブ。
その夜。
YouTube『内海ジンジャーお休みトーク』も上の空のクローブ。目を閉じる。
イメージ上で、ゆっくり流氷からダイブする。
少し潜ると、自分がリビングで1人食事をしている光景が見える。小学生の頃。
お兄ちゃんが交通事故で亡くなってから、家は冷え切ってしまった。
明るくてサッカーが得意だったお兄ちゃん。
私はお兄ちゃんの代わりにはなれない。私は地味で面白くないし、理屈っぽいし。
あれから両親はそれぞれ別の家庭に逃げている。
……でも本当は私のことを、ちゃんと見て欲しかった。
私のことを後回しにしないで欲しい。私だって、さびしいとか、みじめとか、感情があるんだから。
くやしい。私は自分の子どもにはこんな思いはさせたくない。
いや、たった今、私より困っているたくさんの子達を救いたい。
クローブは海の底で、急に視界が開ける。
自分を取り巻く、自治体ルールや支援策、法整備などがスケルトンで立体的に見えてくる。
ジッと目を凝らせば、州国に張り巡らせたシステムも掴めそうだ。
もう寒くない。
これから訓練して、抜け道やショートカット、裏工作もできるようにしなければ。
クローブは手応えを感じていた。