第22話 クローブへの個人指導

文字数 747文字

クローブ君、久し振り。


まだ氷の上から海にダイブできずにいるのかい?

びっくりするクローブ。
君は周りに気兼ねし過ぎる。


シナモン君達みたいに、もっと自分を解放してごらん。

そんなの、どうやったらいいのかわからない。
怖いのかい? 自分の本心と向き合うのが。


そうやって鎧兜を着けているから、重くて沈んでしまうんだよ。

氷の下は冷たい海よ?


凍えて死んでしまうわ。

君は燃料を積んでいるはずだよ。
燃料?
物わかりのいい風を装って、今まで我慢してきたことがたくさんあるだろう?


くやしさ、みじめさ、さびしさを燃やして、暖をとるんだよ。

ちょっと待って。
その夜。

YouTube『内海ジンジャーお休みトーク』も上の空のクローブ。目を閉じる。


イメージ上で、ゆっくり流氷からダイブする。


少し潜ると、自分がリビングで1人食事をしている光景が見える。小学生の頃。

お兄ちゃんが交通事故で亡くなってから、家は冷え切ってしまった。


明るくてサッカーが得意だったお兄ちゃん。

私はお兄ちゃんの代わりにはなれない。私は地味で面白くないし、理屈っぽいし。

あれから両親はそれぞれ別の家庭に逃げている。


……でも本当は私のことを、ちゃんと見て欲しかった。

私のことを後回しにしないで欲しい。私だって、さびしいとか、みじめとか、感情があるんだから。

くやしい。私は自分の子どもにはこんな思いはさせたくない。

いや、たった今、私より困っているたくさんの子達を救いたい。

クローブは海の底で、急に視界が開ける。


自分を取り巻く、自治体ルールや支援策、法整備などがスケルトンで立体的に見えてくる。

ジッと目を凝らせば、州国に張り巡らせたシステムも掴めそうだ。

もう寒くない。


これから訓練して、抜け道やショートカット、裏工作もできるようにしなければ。


クローブは手応えを感じていた。

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