第21話 生理・ミッション
文字数 1,269文字
最初の入れ替わりは一週間限定という話だったので不自由な生活にも我慢ができた。
でも、今度は期間未定の入れ替わり……。
ひょっとして、このまま一生元に戻れずに、女として生きていかなくえてはならなくて、卒業して男の人と付き合いだして、そのまま結婚、妊娠、出産なんてことにでもなったら……。
いやいやいや、中身男のボクが男の人と付き合うなんて想像ができない。
付き合ったことはないけど、付き合うなら女の子がいい。
そう、たとえば……。
「どうしたの暗い顔して? 何か悩みごと?」
顔、ちかっ! ルームメイトのヨシアさんが顔を覗かせてきた。
顔の毛穴が見えるほどの距離で、歯磨きのミントの香りに混じって朝食のパンに塗ったジャムの甘さが鼻腔をくすぐる。
「あっ、いや何でもないよ。月曜日が憂鬱だなって」
今日はそれに拍車をかけて、慣れないミッションスクールの学園生活を、慣れない女の子の身体で過ごさなければならないというストレスがかかる。
気分だけでなく身体も重く感じる。
重い気分も授業が始まれば勉強に集中していつのまにか気にならなくなっていた。
午前の授業が終わり昼休み。
昼食を食べてトイレに行った。
オシッコをして、トイレットペーパーで拭くと赤いものが付いていた。血だ。
えっ!? 何で血が! どこか傷つけた? ぢか?
イヤイヤイヤ、これが噂に聞く生理か!
イブキさんの話では水曜日くらいじゃなかったっけ?
ど、どうしよう、ナプキンとか持ってきていないし。
トイレットペーパーをぐるぐる巻きにして付けとけば大丈夫かな?
ちょっと恥ずかしいけどヨシアさんに相談してみるか。
「ヨシアさん、居る?」
トイレのドア越しに呼びかける。
「どうしたの?」
「その……始まっちゃったみたい」
「ちょっと待ってて」
本当にちょっとの時間だった。
スッと包みが差し出されてきた。ナプキンだ。
「ありがとう! ヨシアさん」
さいわいパンツの方には血は付いていなく、ナプキンを装着して準備万端。
やっぱりゴワゴワする。
「助かったよ、ヨシアさん」
「どういたしまして」
「いやー、本当に面目ない。
でもヨシアさんって、いつも生理用品持ち歩いているの?」
「前回から計算するとそろそろかなと思って準備してたの。
予定より二日も早かったのは意外だったけど。階段から落ちたのが影響してるのかしら」
「えっ! そんな他人の生理周期って把握しているものなの?」
「ちゃんと手帳にメモってるわよ」
そうなんだ……。っていうか、早まることも予想して準備してたのか。
本人よりも気を使っているぞ。
いいのか!? なんかプライベートまで把握され過ぎてないか?
「ふふ、やっぱりイブキさんは私がいないとダメね」
満面の笑みを浮かべるヨシアさんに、ボクは一抹の不安を覚えた。