モテ期の男?

文字数 1,531文字

 まあ、こういう事もあるのかな?

 その日、俺はモテ期だった。
 何故なら朝からラブレターを貰い、昼休みにも貰ったのだ。
 尤も二人共知らない下級生だった。
こう言う遊びでも流行っているのか?
 それとも俺が知らないだけで、俺はこの高校のアイドルなのだろうか?
 同級生達といえば、

「痛いなお前、自分で用意したのか?」

と、一切信じてくれない。
 確かに俺も何かのドッキリかもとラブレターを両手に持って考えていた。
 開けると爆発するとか・・・テロリストか?
カミソリが入っているとか、毒が仕込んであるとか。
 開けるとバーカ!と書いてあるとか。
それならそれで、その冗談笑って許せるのだが。

 あの真っ赤な顔で、真剣な表情。ドッキリやイタズラには到底思えなかった。
 まあ、俺は初体験なので、何とも言いようが無いのだが。
 すると肩に、ビリビリ電気が走った。
又か・・・。

「何、見てんのー?あらラブレター?凄いわね2つも、同じ人?」

と声に振り返れば。隣の家に住む幼馴染の芳美がいた。
 まったくこいつは、デリカシーの欠片も無い。隣に住むと言うだけの女だ。何故か高校まで一緒だ。
男子校にするんだった・・・。

「お前さぁ、相変わらず静電気凄いな。
ビリビリして、たまらんぞ」

と文句を言った。すると、

「知るか!そんなこと」

とムキになって怒った。被害者は俺だ!。
 以前、隣のおばさん(芳美のお母さん)に、

「あの〜、柔軟剤何使ってます?芳美さんの静電気が凄くて、ビリビリするんですよ」

と言ったら苦笑いで、

「あら〜、ごめんなさ〜い」

と笑われた。
 隣の家の柔軟剤を心配する高校生など、聞いたこともない。だが結構、深刻だ。
 突然、触られるとビリビリきてびっくりしてしまう。だから、

「お前のお母さんの誕生日、いつ?」

と芳美に聞いて、誕生日に柔軟剤でも贈ろうかと思っていると。芳美、泣き真似をして、

「えっ?母さんの・・・惚れたの?私というものが、ありながら・・・」

 お前というものが一体何なのだ?
お前は俺の彼女でも無ければ、将来的にも恋愛の対象に成り得ない。
 考えてもみろ、もし結婚なんかすれば、お前は何かある度に実家に帰るだろう。
 しかも隣だ。
 何かあったらって?何があるんだ〜。

 俺は一人っ子だ、親と同居すると決めている。そうだ!浮気などしたら、4人の親から、代わる代わる説教だ。地獄だ!
 俺は同居しないぞ!何の話だ!
いきなり結婚か!
 俺は未だ、恋愛のアンニュイな雰囲気も味わっていないのに。
 アンニュイって何だ!?
ああー!訳分からん、詰まらん、話にならん。

 よし!ラブレターを開けて、気に入った方と付き合おう。と開けようとすると、芳美が、

「どっちの子にビビッと来た?」 

と聞いた。

「へっ?」

「よく言うじゃない。ビビッと電気が走って、運命を感じたって」

「あはは、ないよ。それにお前の静電気で、
ビリビリには慣れっこだよ」

「ふーん」

と、悲しそうに去っていこうとした。
何なんだか・・・。
 うん?待てよ、

「おい!芳美!紙って、絶縁体じゃなかったっけ?」

と言えば。  

「はあぁ〜?!」

と不思議そうな顔をしていた。

※※※

その日の夕方。

「母さん!本当に合ってるの、あのツボ?」

すると、芳美のお母さん、

「合ってるあるよ。ビリビリするね恋思うね」

「あんた中国の方?」 

「違うね」

 私は母から聞いた、恋が成就する経絡のツボを、毎日彼についていた。
 だが彼は、それを静電気と思ったようだ。
どれ程、鈍感何だろう?
参った・・・好きなのに。
一体いつになったら気が付くのやら。
 私の溜息の中、母はニコニコと彼の贈った、柔軟剤を洗濯機に入れていた。

「母さん、別の秘孔を教えて!」

 母は鍼灸の先生だった・・・。
だが、恋の病は治せない様だ。

おしまい。
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