入口

文字数 488文字

 ぼくはふと足を止めた。何かにつまづきそうだったからとか、目の前が断崖絶壁だったからだとかそういう理由じゃない。ただ

というのが正解なのかもしれない。そこでぼくは息を整えながら、ゆっくりと視線を上に向けた。
 建物の周りには窓らしきものは一切なく、ただ恐ろしいほどの白さは不気味な雰囲気を漂わせていた。造り自体はとても単純で、入り口が一つにその隣にはアメリアさんが言っていた証を埋め込むための穴があるだけだった。ぼくはゆっくりその証を埋め込む穴に近付き手を触れた。つるつるとした手触りで滑らかな光沢を放っていて、お城の建築材料で使われていそうだなと思った。早速ぼくは神の証を取り出し、空いている穴に埋め込んだ。かちりという音が聞こえてからしばらく、何もないところに縦に切れ込みのようなものが入り、音もなく静かに入口が開いた。試しに証を取ってみようと思い証を入れた穴へと視線を向けると、証を入れた穴には薄い膜のようなものが張り、取り出すことが不可能になっていた。これはいよいよ行くしかないようだ。
 ぼくは意を決し、不気味に聳え立つ建物─白の塔へと足を踏み入れた。
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