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エピソード文字数 780文字

【紗紅side】

「平手殿、傷の具合は如何ですか?」

 あたしは慣れない合戦により、右腕に斬り傷を負う。

「羽柴殿、大した傷ではござらぬ」

 木下藤吉郎秀吉改め、羽柴秀吉(はしばひでよし)、信長は秀吉のことを気に入っているようだが、あたしは好きにはなれない。

 でもこの目……
 どこかで見たことがある……。

「小谷城はもはや陥落寸前。あとはこ
の羽柴秀吉にお任せ下され」

「羽柴殿、お市の方様はどうなるのですか」

「お市の方様と3人の姫君は、何としてもお助け致します」

 お市の方は信長の妹。
 その妹の嫁ぎ先である浅井長政を攻めるとは、信長の真意があたしには理解出来ない。

「羽柴殿、なにとぞお市の方様を救い出して下さい」

 秀吉は眉をひそめ、あたしを見つめた。

「平手殿はもしやお市の方様を……?」

「とんでもございませぬ。お市の方様は殿の妹君でございます」

「お市の方様は美しきお方。独り身の平手殿がお慕いする気持ちもようわかりますが、家臣の分際でお市の方様に想いを寄せてはなりませぬぞ」

 何が『なりませぬぞ』だ。
 お市の方に下心があるのは、秀吉の方だろう。あたしが知らないとでも思ってるのか。

「それは羽柴殿でしょう。美女と野獣、羽柴殿には高嶺の花ですよ」

「美女と野獣とな!?高嶺の花とは何事じゃ。何と無礼な。男前だからと天狗になるでない。侍女がキャーキャー騒いだからとて、お市の方様はお主に振り向きもせぬ」

「それはそうですね。お市の方様は浅井長政殿を心底好いておられますゆえ。他の殿方は目に入らぬでしょう」

 秀吉はフンと鼻の穴を膨らませ、あたしを睨み付けた。

「それにしても美しい腕でござるな。まるで女のようじゃな」

 傷の手当てで、右肩と右腕を出していたあたしを、秀吉は舐めるように見つめた。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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