第5話 女子寮・大浴場

文字数 1,407文字

「システム内において、職業間の職務等級制度(ジョブグレードシステム)が設定されます…特別行動が認可されました。水森当真個人に限定して、結界間の往来が可能となります」

「おおっ!?」

当真はシステムの説明(アナウンス)から即座に状況を理解する。

「いくぞー!」

そう叫ぶと、榛名春奈がいる結界の西側エリアを目指して、当真は全力で走り出した。

□□□□

ドゴッ! という鈍い音と共にホブゴブリンが吹き飛んだ。

地面に転がったまま、ピクリとも動かなくなったホブゴブリン。見れば、首が妙な方向に折れ曲がっている。

「これで終わりね」

榛名春奈は、ホブゴブリンの頚椎に飛び蹴りを叩き込んで仕留めると、仲間達とハイタッチを決めた。

「いえーい!」

キャッキャッしている榛名春奈達。当真はその光景をスキル・認識阻害を使用して、校舎の影から隠れて見ていた。

「マジかよ…」

彼は呻くように呟いていた。

「なんだ? あの強さは…?」

ホブゴブリンの体格は、オークとほぼ変わらない大きさだ。相撲取り並みにデカイ。それを一撃でやっつけるなんて、いくらなんでも強過ぎだろう。

「そういえば、実家が武術道場だって前に話していたような…」

とはいえ、この強さはおかしい。

「本当にレベルがボクの半分以下なの?」  

レベル15の当真でも、いま目の前で見せられた光景を再現するのは無理…というより、逆にやられてしまう公算が大だ。

「対象の能力値×レベル+ジョブ補正という計算式だとすると…」

選択した職業にもよるのだろうが、当真少年は戦闘力において、榛名春奈の足元にも及ばない。 

「やっぱり、大人には勝てない…」

ぶつぶつと言いながら、当真はこの場での榛名春奈とのセクロスをあきらめる。

「作戦を練り直さないと」

倍以上のレベル差があっても、榛名春奈相手にセクロスをするのは、現状では不可能だ。

「帰ろう…」  

すっかり戦意喪失した当真。彼はそそくさと、その場を後にしようとする。

「ふう、汗かいちゃった」

「!?」

そう言うと、榛名春奈は仲間達と一緒に女子寮のある方に向かって歩き出した。 

「………」

無言のままに、クルリと方向転換した当真。彼は榛名春奈達の後を静かに尾行し始めた。

□□□□

(うんしょ、うんしょ…)

(よいしょ、よいしょっと!)

「さて…春奈先生はどこだ?」

あれから3ヶ月…成長期とレベルアップが相まって、少年は成長していた。

「いたっ!?」

後ろを向いてはいるが、それでも榛名春奈の下着姿に興奮する当真。少年の性的欲求が満たされいく中、その胸が痛いほど高鳴った。
「下着っ!? やっぱり黒だ!!」
カァーと顔が火照り、体温がグングン上昇していく。当真は我を忘れて、榛名春奈のハダカを眺めていた。
頭の位置が落ちて、当真の視界がずり下がった。その途端、目の前が白い壁だけになる。

「あっ!?」

突然、榛名春奈の着替えが見えなくなってしまう事態に、彼は焦りの声を上げた。

「ふんぬっ!」

気合いの声と共に、当真は即座に壁をよじ登る。

「ぬう~!」

大声を上げても、スキル・認識阻害と遮音シートの効果により、榛名春奈達に彼の存在を気取られることは無かった。

「ぬおっ!!」

そして再び、当真は窓枠に取り付くことに成功する。

「春奈先生のおしりっ!?」

あまりにも衝撃的な光景を目にして、当真はそこから動くことが出来なくなってしまう。
「う…うおー! 我が生涯に一片の悔い無し!!!」
感動の涙を流しつつ、少年は叫んでいた。
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登場人物紹介

【水森 当真《みずもり とうま》】


本編の主人公 (12)。特に目立った長所もなく、ただ単に溢れんばかりの若さを持っているだけのスケベ小僧。クラスでも埋没気味《モブ》な生徒の一人。

【榛名 春奈《はるな はるな》】


メインヒロイン(22)。今年の春に、私立水上学園中等部に赴任した新任の女性教員。そして、周囲から爆乳と称される程の大きな乳房の持ち主。


活発で人付き合いも良く、身体を動かす事が大好きである。その一方、漫画・小説・アニメ・ゲーム等の在宅趣味も嗜む。娯楽消費者として、インもアウトもバランス良くこなす性格をしている。


また、幼少より道場に通い詰めて、武芸を学んでいた。その影響で、非常時には物事をシビアに捉えるクセがあり、常人より一歩も二歩も見切りが早い。


突如現れた、モンスター達を相手に立ち回り、彼女は強力な職業《ジョブ》とスキルを取得する。その力を使い、生き残った生徒達を守ろうと奮戦する。

【絵堂沙織《えどうさおり》】


4月生まれの23才。私立水上学園中等部に勤める新任の女性教員。榛名春奈とは同期。185センチという見上げる程の高身長を誇る女性。


異世界転移前は、長身巨乳のお姉さんとして男子生徒から人気を博していた。それゆえに、彼女は当真の対戦相手として候補に上がっている…が、それはまだ先の話。


鎧袖一触を好み、テクニカルな春奈とは真逆の戦闘スタイルを得意としている。その恵まれた体格でもって、鬼に金棒という大型武器を操り、敵を一撃で粉砕する生粋のパワーファイター。

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