試してみたいという欲求

文字数 882文字


ときどき、辛いものが食べたいと思うことがある。
といっても、辛いものは得意ではなく、ちょい辛が美味しいと思うくらいの、辛いもの好きには到底入れてもらえないくらいの嗜好しか持ち合わせていない。
それでも食べたいと思ってしまうので、市販のキムチや「旨辛」と銘打たれた、私の辛さレベルでも食べられるものを選んで食べている。

そんな私のために先日、旦那さまがインスタント焼きそばを買ってきてくれた。
それがなんと、「激辛」と書かれた代物。
ちなみに旦那さまは私よりも辛いものが苦手だ。私が辛さレベル3だとしたら、旦那さまはレベル1。カレー屋さんの中辛では辛すぎるレベル。ゆえに自分よりも赤々としたものを食す私のことを辛いものが平気なのだと思っている節があり、折に触れて「激辛は食べられないよ」と言ってきたのだけれど、あまり取り合ってくれない。そして今回、なぜかウキウキな様子で焼きそばを買ってきた。
むむむん、これはちょっと困ったぞ。
「辛すぎて食べられないかもしれないよ」
「激辛」の文字を指差して告げると、困ったという私の心の声も聞こえてしまったようで、旦那さまはしょんぼり。
かわいそうなことをしたかな、と思いつつも、だって激辛よ? 痛くて食べられない激辛ものに泣いた過去を思い出すと、とてもではないけれど大歓迎とはなれない。

でもまあ、結論から言うと、今回は大丈夫でした。
旦那さまはYouTubeをがっつり検索し、一緒に炒める具材を研究。そうして作ってくれた激辛焼きそばは、とろりんと半熟のたまごの絡まる、旨辛のレベルの焼きそばになっていました。
旨辛だったらもう、大好物。
「辛いね」「ちょっと辛いね」「でも美味しいね」呪文のようにつぶやきながら、完食いたしました。
ごちそうさまでした。美味しかった。
ちょっと厳しいこと言っちゃってごめんねの意味も込めて、作ってくれた旦那さまにお礼を言いました。

そうね、こういうのもだいじかもしれない。
試してみたいという欲求は、楽しく暮らすための原動力なのかもしれないな。
自分では絶対にチャレンジしないであろう激辛やきそばに、そんなことを考えたのでした。
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