第6話

文字数 1,244文字

どれくらいそうしてたんだろう

もう、すっかり陽は落ちて、


外から差し込む光はネオンに変わってる

「……」

泣いたら、少し落ち着いた

…ので

おそるおそる顔を上げると


佐々くんと目があった

「……」

「……」

佐々くんはさっきまでの体勢と全く変わらない

頬杖をついたまま…

じいっ……
つまんなそうに、私を見てる

「ぇ…と、そ、その……」

「……」

(なんか、恥ずかしくなってきた…)

(だって、涙とか鼻水とかで、顔はとにかくぐちゃぐちゃだし…)

(猫っ毛だから、ボサボサどころか途中で絡まって大変なことになっちゃってる)

「あ、あの…ホントに、ごめ…なさ…、ずずずぅ~~~っ!!」

「鼻、すすんないほうが、いいんじゃね?」

「ぁ…うん。…ごめ…ん、ずず…、そ、その…」

「パンツ見えてるぞ」

「へっ…?」

しわくちゃにめくれ上がったスカートから薄いピンクの下着……

「ぎゃあっ!!」

「(ぎゃあってなんだよ)…胸、ブラずれてる」

「ひぃいいい~~っ!!」

「まあ、オレがやっといて言うのもなんなんだけどさ…」

(やだやだ、もお!)

(そゆコトは、もっと早く言ってください!)

制服のブラウスを胸の前で握りしめる

ギュウ…

「唇、噛むなよ?…血が出るぞ」

「……ぅう〜」

また、涙がでてきた

(情けない……)

(も、消えてしまいたい……)

*★*―それから数十分―*★*

チラ…

佐々くんをみるけど…

「……」

(部屋の中が暗くて表情がわかんない)

ただ、佐々くんは微動だにしない

怒って帰ることも、私に近づくこともしない

(さっきも、普通に話してた…)

(…なんで?)

(お、怒ってない?…のかな)

*★*――さらに数十分――*★*

「(…?もしかして)寝てる?」

「寝てねぇよ。この状況で寝るとかアホだろ」

「ひゃあっ!…だ、だって」

「"だって"…なんだよ」

「だって……」

「だ…だって…、いつも、そ…ぅ、なんだもん…」

私は意を決して話し出す

「……」

「…みんな…怒るもん、がっかりだって……言うの」

「今日だって…それでフラれちゃって…」

「……」

「すぐ…やらせて、もらえそうだったのに…って」

「……あー」

「まあ、そいつらの気持ちは、わからなくもないわ」

心底くだらなさそうに、呟く

「…そりゃぁ、そんなもんだろ?男なんて……」

「で…でも、私、でっ…できないっ…んだもん、だ…からっ…」

「だろうなぁ……」

ギシリ…

ベッドがきしむ

距離を測るように

ゆっくりと

佐々くんが近づいてくる

「わ…わた…し、見た目こんな…だから…」

「だよなぁ~…誰も、処女だとは思わないわなぁ……」

(ひどいっ!)

(なにも、そんなハッキリと、言わなくたっていいじゃん!)

("人を見た目で判断しちゃいけません!"ってならわなかったの⁉︎)

佐々くんは、もう目と鼻の先

暗闇の中、ようやく佐々くんの顔が見えた

「……」

「……(怒って…ない)」

(…怒って、ない。…ケド……)

(そんな、力いっぱい呆れた顔しなくたって、いいじゃん!!!!)



「ぅうわああああ~〜〜~んっ!!」




「はぁああああ~~……」


佐々くんの盛大なため息が

頭の上から降ってきた

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色