第57話 魔術師のお掃除術1
文字数 2,076文字
「と、いうわけでこれより家の
「いや、どういうわけでだ!?」
私の言葉に対してアルフォンス様がそう叫ぶ。
あら、流石に説明不足だったかな……。
それならここは一つ補足をしなくてはいけませんね。
「カビとほこりは健康の敵……この環境ではまた体調を崩すのは必至です。なので健康のために家を綺麗にしようということなのです」
せっかく私が
そんな無意味なことをするわけにはいかないので、私が掃除をしてみせて、ついでに掃除の仕方をロイくんに簡単に教えて帰ろうと思ったわけだ。
「い、言ってることは一応分かるが……」
「私の荷物の中に都合よく掃除に使えそうな物もありましたし、これを使って掃除をします!!」
いやー、荷物の中に何となくテキトーものを放り込んでおいてよかったー!!
今後も一見使わなそうなテキトーなものも、じゃんじゃん持ち歩くことにしようっ!!
私が得意になって並べた掃除道具を眺めていると、ロイくんが不安そうな視線を私に向けてきた。
「ねぇ、なんで掃除なんか……そもそも母さんは良くなったんじゃないの……?」
うん、これはロイくんにも説明が必要そうだね。
「いいロイくん?」
私は
「キミのお母さんの病気の原因は、この家の清潔さが足りないせいなんだ。今、一時的に良くなったとしても掃除をしないとまたお母さんは寝込むことになるよ……最悪死んでしまうかもしれない」
「そんな!!」
ロイくんが悲痛な声を上げる。その姿に少し胸が痛むけど……でもこれをそのまま放置するともっと状況が悪くなる可能性がある。だから放置するわけにはいかないんだ。
うん、ごめんね……。
「でも掃除をすれば大丈夫だよ……!!」
私は彼を安心させるためにも、なるべく明るい声が出るように意識しながら言う。
「今から掃除の仕方を教えてあげるから、それを覚えてこれからも続ければ病気にも
「うん……分かった」
「よし、いい子だね」
「母さんのために頑張る!!」
「うん、それじゃあ私も出来る限り協力してあげるからね」
よし、これでロイくんのお母さんの病気が再発する可能性も多少は低くなるだろう。
貧民街の環境自体が良くないからあくまで多少だけど、普段生活する家が清潔になることは全く無意味ではないはずだ……。
そして私がロイくんから視線を外すとアルフォンス様と目が合った。
あ、そうだアルフォンス様はどうしよう……掃除なんてさせるわけにはいかないし、ここは少しだけ待ってて貰えるようにお願いしようか……。
「で、では……私も……」
私がそんなことを考えていると、彼はやや視線を外しつつそんなことを言い出した。
ん? 私も……?
「えーっと一応お聞きしますが、それはアルさんも掃除をするつもりという意味ですか?」
「そうだが……」
え、本気で? 掃除ですよ……!?
あ、でも料理とかもしていたし意外に掃除もしたことがあるとか?
「ちなみにご経験などは?」
「ない、が問題はない……はずだ」
あ、はい……って、やっぱりないんですねー!!
いや、それだと問題しか感じないのですが……?
「だ、ダメか……?」
「いえ、ダメではないですけど……」
するとこれって、まずロイくんに掃除を教えるのは必須として、アルフォンス様のことも面倒をみる必要がある感じでは?
うーん、二人分か……まぁ、いけるかな。
手間が掛かる主要な部分を私の方でサッと片づけてしまって、残りを少しだけ教えながら掃除するのであればたぶん問題ないはず。
「……ではアルさんも一緒にお掃除をしましょうか?」
言葉に疑問符が付くニュアンスになってしまったのは、正直この人が本気なのかどうか若干疑っているからである。
ちなみに今なら断られるのも全然問題ありませんよ!!
「ああっ!!」
…………。
なぜアルフォンス様は、こんなに元気いっぱい嬉しそうに返事をするのでしょうか。
え、これからするのは掃除ですよ。楽しいことなんて一つもしませんよ……?
なにか大きな勘違いをされてませんか?
まぁ、その辺は考えても不毛そうなので一旦触れるのは止めておこう。
あとで、やっぱり思っていたのと違うから止めるとか言い出すかも知れませんし、それはそれとして対処しましょう。
さぁーて、それではここからは私の掃除スキルの見せ所ですね!?
普段から研究資料や実験道具を広げて、汚して、散らかして、そしてそれを片付けて……を繰り返している私の力を見せてあげましょう!!
どちらかと言えば散らかしたり汚す能力の方が高い気がしないでもないけども、それを補うためにどれだけマズイ感じになったとしても、魔術を使った力技で証拠も残さずピカピカにする技術を
ええ、だからこの家もその技術を使ってピカピカにしてみせましょう!!
私は中途半端なことなんてしないので、やるときは徹底的にやりますよーっ!!