神速の燕
文字数 958文字
ツェラーたちのパーティーメンバーたちは背中を丸めて椅子に腰かけているだけで、喉がひり付き、冷や汗が流れていた。
パーティー〈神速の燕〉のリーダーは腰に二本の剣を下げるツェラーだ。先日、それぞれ別のパーティーでリーダーをしている友達二人と尊敬する前衛は誰かという話題で盛り上がっていた。
他のメンバーは炎系の魔法を得意とするエムリヒ、神聖魔法を使える癒し手のコレル、それからスカウトのクルーガーという四人構成だ。
今日はパーティーのランクが2へ上がったお祝いを冒険者ギルドでするつもりだった。だからツェラーはギルドの席を予約しておいたのだ。
だが、しかし。
その席にはすでにギルドマスターであるカレタカがニコニコ顔で座っている。
ツェラーたちは案内された席が間違っていないかと案内してくれたロセスに聞いた。だが彼女は笑って「こちらが予約の席です」と言い残して行ってしまった。
カレタカに促され、四人は顔を見合わせたあと、それぞれの椅子にかける。
そして無言で背中を丸め、冷や汗を流しながら座っている。
ギルドで一番偉い人との同席なのだ。まだ駆け出しの肩書が取れ切っていないツェラーたちが恐縮するのも当然のことだった。
カレタカはパーティーの面々の困惑を気にした様子もなく、スタッフに声をかけている。
クエストをクリアしたことで少し懐が温かくなったツェラーたちは、今日はお祝いだからとちょっと奮発してコース料理を予約している。
それを聞いて嬉しい気持ちがなかったわけではない。多少まとまったお金が入ったとはいえ、できれば出金は抑えたいのだ。
冒険に必要なアイテム、よい装備への更新。当然、日々の生活費もある。
駆け出しの冒険者たちは何かと入り用なのだ。
だからだろう、四人は顔を見合わせている。
料理代を肩代わりしてもらえるのであれば感謝の気持ちを伝える必要がある。そしてそれをするのはリーダーであるツェラーの役目だろう。
メンバーたちの懇願の視線を受けて、ツェラーは内心ため息をつきながら口を開いた。
ひらりとカレタカは手を振る。