文字数 368文字

「気づいて? あなた変わったわ。自分のことばかり考えてた」彼女からテキスト・メッセージがとどいていた。
 いってみると彼女の姿はなくて、今までみたことのない、グレーに輝くペルシャ・ラグがベッドのシーツの間から斜めに(のけぞるように)垂れていた。
 部屋を出て、別の女の子たちのドアを叩き、彼女の行方をたずねたけれど、数日姿をみないという。
「消える子いるのよ。めずらしいことじゃないわ」彼女たちはそういった。「自分でいうのもなんだけど、こんな商売する子、まともじゃないもの」

 彼女の部屋にもどり、ぼくはベッドのうえのラグ・マットをみつめた。
 それはもちろん動きはしない。声もたてない。ひっそりと窓外からの明るい陽射しを吸い込んでいる。
「あなたは自分のことばかり考えてた」という彼女のテキストが、彼女のあの声で、さびしくぼくの頭のなかに響いた。
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