4 ✿ 救いのマリー

エピソード文字数 1,272文字



 マリーたちが事件に巻き込まれた日の夜。
 都内各所のイベント会場へ、痴漢【ソックリア】について注意が喚起された。

 翌朝、午前七時に、警視庁特殊課、捜査本部の電話が鳴った。
 電話の主は、「ダウンタウンプール」の警備担当、トップから。
 夏のみ営業の屋外レジャー施設だという。

「注意喚起のあった人物と、よく似た人間を見かけた警備員がいる。監視カメラを確認したところ、それらしい人物が映っていた」

 勝はすぐさま、宿木(やどりぎ) (えん)をプールへ向かわせ、情報収集にあたらせた。本当は、勝みずから現場へ向かいたかったのだが。

「お忙しいところ、恐れいります。夜の虫展示会、警備の者ですが…」

夏フェスの警備担当ですが…」

 各イベントの警備担当者から、相次いで連絡があったのだ。
 宇佐兎の「アニメコスモ展」で痴漢事件が連日起こり、ニュースになった。
 コスモ展のスタッフが「入場者が減った」と嘆く姿がテレビに映された。
 「風評被害」を恐れた他の夏イベントの主催者は、すぐさま警察との連携を強めようと考えたのだ。

 夏は稼ぎ時一定期間しか開かれない展示会などは、お客さんが入らなければ赤字になってしまう。警察から【痴漢ソックリア】について情報を得た、各イベントの警備スタッフは、血眼になって手配犯を探した。

 ソックリア以外にも、性犯罪の指名手配犯の目撃情報も寄せられた。


「マリー・ローゼンクランツの描いた似顔絵に、大助かりだ。褒賞モンだぜ」


 勝は、通話の「切」を押して、微笑む。

「ローゼンクランツ家の人は、なにかと得意な〝才〟がありますね。ラルフさんの魔法や予知、修得言語数…彼はまさに〝ウィザードの王〟。いとこのマリーさんもまた…素晴らしい画才をお持ちです」
 智子は感嘆する。

「この絵には、魔法がかかってんのかもな」
 勝は、ソックリアの似顔絵を、じっと見つめる。

救いのマリー

「たしかに」
 智子がうなずく。

「いや、今の言葉は俺が考えたわけじゃないんだ。ラルフさんが言っていたんだよ。ローゼンクランツ家には〝マリー〟と名のついた人間が家を守ると伝えられているって。守るだけではなく、救いだとも彼は話していた」

「事実、救われています。ただの、おとぎ話ではないようですね」
 智子は笑んで、また鳴り出した電話の受話器を取った。

「はい……はい……ええ、そうです………え? 不審物?
 智子は、話を聞きながら、メモを取る。

恐竜パレード展示会のスタッフからです。恐竜の大型模型に妙なものが仕掛けてある、と」

「智子。ただちに、展示会場へ向かってくれ」

 智子は「了解」と言うと、きびきびした動きで、本部を出た。
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登場人物紹介

マリー・ローゼンクランツ


 絵画修復士を目指す少女。

 事件に巻き込まれ、傷心旅行で日本へやってきた。

(事件の詳細は、前作:ローゼンクランツの王 を参照)

守部 良治 (もりべ・りょうじ)


 高校二年生。球児。

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