第1話 ウエイトレスと占い師

文字数 2,091文字

 一人の少女と一人の謎の中年男の出会い、それは映画やドラマの様な運命的な出会い方でもなく、ごく平凡なものであった。いや、少しだけ変わっていたかもしれないが……

昼下がりのとある人気のない喫茶店
幸せの形は一つではありません。きっとあなたに未来は微笑みますよ
「──うぅ、ありがとうございます、先生……またお願いします」
カチャカチャカチャ……(-。-)y-゜゜゜フゥ~~~……
あの~、ちょっといいですか?
ビクッ!!Σ(・ω・;|||は、はい?
あ、いきなり声掛けてすいません
あ、あぁ……ウエイトレスさんか。どうしました? あ、やはり不味かったですかね、ここで占いしてたら。コーヒー2杯で2時間もいましたし……
あ、やっぱり! 占いされていたんですね? そのカードって何ですか?
ん? タロットカードですよ。これ使って、タロット占いやってたんです
へぇ~~~、占い師さん、初めて見ました。当たるんです?
ま、他の占い師よりは、かな?
じゃ、私を占って下さい♪ コーヒー代サービスしますので♬
えっと……俺の鑑定料、それじゃ足りないけど……
初回サービスって事でお願いします♪
じゃ──触りだけ、ね。ただ、接客しなくて大丈夫?
あ、大丈夫です♪ この時間はまずお客さん来ないですから♬
あ、そうなんだ……じゃ、早速やろうか
はい、お願いします♪
じゃ、占いをする前に、ちょっと質問するね
は~い
まず、ウエイトレスさんの名前と年齢教えて
私、幸せと書いてユキって言います、高校3年生です♪
──! こ、高校生? ……平日じゃん、今日
あ、期末試験の時期なので学校は午前中だけなんです♪ ほら、ちゃんと勉強道具も持って来てますし
あ、なるほど。──で、何を占えばいいかな?
あ、え~っと……私について♪
ん? どういう事?
私について、当てて下さいって事です♪ 占い師さんだったら分かるかな~って思いまして♬
……そう来たか。ま、いいでしょう。じゃ、両手をテーブルの上に乗せて、俺がいいって言うまで目を瞑って
??? こうですか?
あ、それでいいよ。──じゃ、ユキさんの心の中、ていくね
──30秒後
はい、もう目を開けていいよ
はーい♪
じゃ、カードを一枚引いて、それを俺に見せて
はーい♪ んしょ……これでいいですか?
ん、いいよ。──吊るされた男、か……なるほど、なるほど、そっか~……
……何か分かりました?
では、ズバリと。……ユキさん、周りの人には言えない事、しているね?
──!
ちょっと信じがたいけど──援助交際か風俗か……
──!!
それでもって、高校は異様に進学校でそこでもかなりの優等生──かな
ど……どうして……?
ん? その反応は──ズバリだったかな?
私と……会った事あります?
ユキさんは俺を見た事ある? 当然、初対面だよ
……私の裏の顔、ズバリ当てた人、初めて……です
ま、占い師ですから
占いってそんな事分かるんですか? ちょ、ちょっと怖いです
そうだよ、何でもえるよ。──っていうのは嘘で、これは単なるプロファイリングだけどね
???
まず、勉強道具。ぱっと見だけど、薄い参考書にチャート式だよね。その参考書を使っている高校、この街だと●●高か●▲高しかない筈、かつ双方ともかなりの進学校だから、そこは確定出来る、と
……!
更に言うなら、試験中にバイト入れるくらいだから、余裕あるかバカの二択。バカならそもそも勉強道具持ってこない筈だから、そこでも優等生である可能性が高い、と
……!
で、その腕時計、ティファニーだよね。確かそのタイプだと値段は50万くらいだったかな。その持ち物に対して、服はノーブランドもの、ちょっと不自然だな、と
……!
仮に家が金持ちの場合、衣服やバッグもある程度のモノで揃える筈だけど、そうじゃない。という事は、自分で買ったものである事が濃厚。じゃ、その高価なものをその年で買えるにはどんな仕事か? と推測していくと、ね
……!
更に言うなら、腕時計なら隠しやすいしから──かな? 最悪見つかっても貰ったとか中古で買ったとかごまかし効くし。ただ、見る人からみれば分かるけどね。それ、確か去年くらい発売のタイプだし。ま、そこまで分かる人はレアだと思うけど、一応気を付けた方がいいかもね。俺みたいに読む人、いるかもしれないから
……占い師って皆、そんな観察力と知識持ってるんですか?
さぁ……他の占い師知らないし、完全オリジナルかな? そもそも俺、タロットなんぞ分からんし、ね
──え?
最初に今回みたいに一発かますと、大抵の人は異様に信用するのね、凄い占い師だ~って。そうしたら、後は言い方悪いけど、テキトーに相談相手になってれば、勝手に満足してくれるよ、と。──って、何ネタバラシしてるんだ、俺……
す、凄いです! 思わず感動しちゃいました! これだけの会話で頭が良い──いえ、頭がキレるっていうんでしょうか、それを雄弁に語るって尋常じゃないです。おじさん、何者なんですか?
ん? 単なるその日暮らしのフリーの占い師だよ。一応、名刺渡しておこうか、はい
ありがとうございます。……上杉さんですね、覚えておきます
じゃ、また会う機会あったら、ね
はい♪
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色