iCAT
文字数 648文字
ニコライは、電子端末の画面に写し出された記事を読んでいる。
彼の持つ端末にはカバーが被せられ、その上部には猫耳を模した布が縫い付けられていた。
捨てられた子供を暖めてあげただけじゃなく、舐めてくれたんだって。
立派だとは思わないアラン君?
捨てる神あれば拾う神あり……なんて東の国では言うらしいけどさ、捨てられた子からしたら猫は神様だよね?
だって、すっごく寒いところに捨てられたんだよ? 幾ら着込んでいたって、小さな体には辛いだろうに。
そんなところに、猫が寄り添って暖めてくれただなんて素敵だよね。
自分の領域に入られたんだし、怒って攻撃したっておかしくないのに。
猫ってさ、犬と違って人間に従わない生き物じゃない?
それなのに命を救っちゃうだなんて、無慈悲に捨てた屑に比べたら天と地程の差があると思わない?
ニコライの話を聞いたアランは目を丸くし、手に持った端末を見下ろした。
ニコライは、それだけ話すとアランの前から姿を消す。残されたアランは、暫くの間端末を見つめていた。