第6話
文字数 989文字
「ごぼっ…」
急な濁流にのまれる。
水は冷たく、全身にまとわりついてくるほど重い。
なんとか目を開けると、そこには真っ赤な世界が続いていた。
(あれ、息ができる…)
かなり酸素が薄い感じはするが、今すぐ窒息死というわけでもなさそうだ。
体もゆっくりだと動かせる。
辺りを見回すと、全方向からいくつもの血走った目がこちらを見ていた。
「ひっ…」
地面からは無数の手が生えており、私の足を掴もうとしている。
(なんとか地上に出なくちゃ。)
そう思い上へ上へと泳ごうとするけれど、いつまでたっても辿り着けない。
「うっ…」
息苦しくて、泳ぐのをやめる。
早く指輪を手に入れてここから脱出しないと。
「考えろ、自分。」
ペチンと頬を叩き、とりあえず歩き回る。
先程見たケーキよりも、なんだかここの方がおぞましい感じがする。
きっとトーマスの言う「呪い」が強烈なんだ、
この池は。
(呪いーそれはきっとカナエが憎んでるもの。)
ケーキより、ウェルカムボードより、消えてほしいもの。今泉さんとの結婚に最も不必要なもの。
きっとそれは花嫁だ。
今泉さんが愛してやまない妙子さん。
彼女さえいなければ結婚ができる。彼の心を手に入れられる。
あの単細胞女ならそう考えるに違いない。
(恐らく彼女はこの池で、カナエに沈められた。)
神父であるトーマスを殺しておいて、花嫁である妙子さんを殺していないはずがない。
(この目も、腕も全部彼女のものだ。)
よく見ると、目からは涙が流れ出ている。彼女はずっと池の底で呪われているんだ。
(だとすると…)
思考を巡らせていると、急に下から伸びてきた手に首を掴まれた。
「がはっ…!」
ギリギリと首を絞められる。頭の中がちかちかとし、口の中には鉄の味が広がる。
「やめて、妙子さん…」
気道が圧迫されていく。止めてくれるそぶりはない。
震える手でポケットから指輪を取り出す。
これを指にはめればやめてくれるかもしれない。
(もうだめだ、意識が…)
最後の力を振り絞り、薬指に無理やり指輪を通す。
そして第3関節まで到達した瞬間、目の前がはじけた。
「はーっ、はーっ」
水を得た魚のように跳ねながら呼吸をする。
どうやら地上に打ち上げられたようだ。
そしてふもとには白いウエディングドレスを着た女性が立っていた。
「あなたが妙子さん?」
つぶれた声で尋ねると、彼女はコクリと頷く。
「お願い、力を貸して。」
時間がもうない。時計の針は既に10時を指していた。
急な濁流にのまれる。
水は冷たく、全身にまとわりついてくるほど重い。
なんとか目を開けると、そこには真っ赤な世界が続いていた。
(あれ、息ができる…)
かなり酸素が薄い感じはするが、今すぐ窒息死というわけでもなさそうだ。
体もゆっくりだと動かせる。
辺りを見回すと、全方向からいくつもの血走った目がこちらを見ていた。
「ひっ…」
地面からは無数の手が生えており、私の足を掴もうとしている。
(なんとか地上に出なくちゃ。)
そう思い上へ上へと泳ごうとするけれど、いつまでたっても辿り着けない。
「うっ…」
息苦しくて、泳ぐのをやめる。
早く指輪を手に入れてここから脱出しないと。
「考えろ、自分。」
ペチンと頬を叩き、とりあえず歩き回る。
先程見たケーキよりも、なんだかここの方がおぞましい感じがする。
きっとトーマスの言う「呪い」が強烈なんだ、
この池は。
(呪いーそれはきっとカナエが憎んでるもの。)
ケーキより、ウェルカムボードより、消えてほしいもの。今泉さんとの結婚に最も不必要なもの。
きっとそれは花嫁だ。
今泉さんが愛してやまない妙子さん。
彼女さえいなければ結婚ができる。彼の心を手に入れられる。
あの単細胞女ならそう考えるに違いない。
(恐らく彼女はこの池で、カナエに沈められた。)
神父であるトーマスを殺しておいて、花嫁である妙子さんを殺していないはずがない。
(この目も、腕も全部彼女のものだ。)
よく見ると、目からは涙が流れ出ている。彼女はずっと池の底で呪われているんだ。
(だとすると…)
思考を巡らせていると、急に下から伸びてきた手に首を掴まれた。
「がはっ…!」
ギリギリと首を絞められる。頭の中がちかちかとし、口の中には鉄の味が広がる。
「やめて、妙子さん…」
気道が圧迫されていく。止めてくれるそぶりはない。
震える手でポケットから指輪を取り出す。
これを指にはめればやめてくれるかもしれない。
(もうだめだ、意識が…)
最後の力を振り絞り、薬指に無理やり指輪を通す。
そして第3関節まで到達した瞬間、目の前がはじけた。
「はーっ、はーっ」
水を得た魚のように跳ねながら呼吸をする。
どうやら地上に打ち上げられたようだ。
そしてふもとには白いウエディングドレスを着た女性が立っていた。
「あなたが妙子さん?」
つぶれた声で尋ねると、彼女はコクリと頷く。
「お願い、力を貸して。」
時間がもうない。時計の針は既に10時を指していた。