プロット

文字数 1,136文字

「マルセルを愛した少女と、愛すべきバカふたり。」プロット

起)舞台は昭和43年の京都。
公立中学校に通う純粋無垢で心優しいユウキには幼なじみがいた。
1人は元気いっぱいでヤンキー混じりのケンジ。
もう1人は物静かで病弱な少女シズク。
3人は幼い頃からずっと仲良く一緒にいて、保育所から小学校、小学校から中学校に上がってもその関係が途切れる事はなかった。
そんな3人だが、ユウキとケンジは病弱なシズクの体調をどんな時でも常に気にかけていた。
それをシズクはいつも申し訳なく思っていた。

承)11月9日〜12月27日の期間、フランスの画家であるロートレックの作品展示会【ロートレック展】が京都国立近代美術館で開催される事になった。
シズクはロートレックの絵が大好きで、ユウキとケンジを誘ってロートレック展に行く約束をする。
普段は物静かで自ら行動を起こす事の少ないシズクの誘いをユウキとケンジは不思議に思った。
実はこの時シズクは心臓病を患っており、自分の命がもう長くないと医者に宣告されていた。

転)12月24日のクリスマスイブに3人は美術館を訪れる。
美術館の中ではロートレックの様々な作品が展示されていた。
ユウキとケンジは館内を歩き回るが、シズクはずっと同じ場所に留まっていた。
シズクが見ていたのは横顔の大人の女性が描かれている『マルセル』の絵であった。
ユウキとケンジがシズクのもとに行き、ケンジが「他の絵も見ないともったいねぇぜ?」と言う。
シズクはマルセルの絵を眺め、悲しげな表情を浮かべながら小声で呟いた。
「素敵な絵。あたしもこんな大人になりたかったよ……」。
その瞬間、シズクは地面に倒れた。
シズクが救急車で病院に運ばれる。
病院に着いたユウキとケンジは医者の口からシズクが心臓病を患っていた事を告げられ、もってあと数日の命だと知った。

結)ショックを受けた2人だったが、ユウキがふと「マルセルの絵をもう一度シズクに見せてあげたいね」と言葉を漏らす。
ケンジはそれを名案だと言うが、ユウキは「今のシズクを美術館には連れていけないよ」とうなだれる。
ケンジは大きく首を横に振って言った。
「違うって! “持ってくる”んだよ、マルセルを!」。
ロートレック展の最終日を控えた真夜中に美術館に忍び込んだユウキとケンジ。
守衛の隙をついてマルセルの絵を盗み、美術館を抜け出した。
そのままシズクのいる病院に走り向かう。
シズクの病室に着いた2人はこっそりとシズクを起こし、風呂敷に包まれていたマルセルの絵をシズクに見せた。
クスクスと小さく笑い合うユウキとケンジ。
シズクは溢れ出る涙を手で拭い言った。
「ふたりは……グスッ……ほんとにバカだなぁ……。これ、犯罪だよ……?」。
その朝、シズクは眠るように静かに息を引き取った。
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