メイド大好き
文字数 1,453文字
福島健一はメイドが三度の飯よりも好きだ。
いや、メイドも好きだがメイド服も好きだ。
どちらも好きなので、どちらかを選べと言われれば三日三晩悩んだ末に、両方と答えてしまうぐらい好きだ。
だから前の人生ではお金を握り締めて毎日のようにメイド喫茶に通った。
メイド喫茶を知らない人はいないと思うが、コンマ数パーセント以下の存在に向けて簡単に説明をしておこう。
メイド喫茶とはウェイトレスがメイド服を着ている。
それだけだ。
コーヒーや紅茶といった飲み物の他、軽食なんかも注文できる。
それだけだ。
ちなみにメイド喫茶では他にもさまざまなサービスを提供してる。
たとえば、注文した料理に美味しくなる魔法をかけてくれたりだとか、一緒に写真を撮れたりだとか、オムライスにケチャップでお願いをした文字や絵をかいてもらったりだとか、カードを引いて商品の割引をしてくれたりだとか。
そういった特別なサービスがあるから足しげく通うのだ。
もちろん、メイドとして働いている女性たちの笑顔を見て癒されるためでもあるし、給仕をしてもらってささやかなご主人様感を味わうためでもあるのだが。
さらにメイド喫茶ではいろいろなイベントを随時開催している。
アニメやゲームとコラボをして、登場キャラが着ている衣装に着替えるコスプレイベントは定番の一つと言えるだろう。
そういうときは作品に出てくる食べ物をイメージした料理も提供される。
彼女たちが創意工夫を凝らして準備するであろう新メニューは一通り試すというのが健一たち選ばれたメイドスキーにとっての恒例行事となっている。
食事のネタを提供しているのは関連してる野郎スタッフだぞなどと夢を壊すようなことを言ってはいけない。
どんな世界にだって言わなくてもいいことは存在するのだ。だから黙れ。
他にも季節モノのイベントは定番だと言えるだろう。
暑い夏の時期には浴衣デーがある。
和風テイスト漂う店内はいつもと違った喜びを提供してくれる。まさに暑い夏に一服の清涼感が得られるのだ。
ただし、過ぎたるは及ばざるがごとしというイベントがあったことも忘れてはならない。
スク水デーを開催することによって客が殺到してしまい警察騒ぎになったのだ。
客にも適度な節度が必要であり、イベントも煽りすぎてはならないという貴重な教訓が得られた。
あー、物事は前向きにとらえた方が何かと幸せになれるぞ?
他にもバレンタインのシーズンに顔を出せばチョコをもらえる。
これは欠かせない。健一も少なくとも十年はこのイベントに参加してきた。
寂しい? 何を言っているのだね。
ただ女の子からチョコを合法的にもらっているわけなのだが。
それのどこが寂しいというのか。ちょっとなに言ってるのかわからない。
え? もしかして君、頭悪いの?
女の子からチョコもらえるんですよ?
別にお金払っているわけでもないのに!
飲食代は関係ないですからー! 全然関係ないですからー!
チョコをメイドさんからもらっているご主人様に対する嫉妬ですか?
あー、わかりますわかります。
でも男の嫉妬なんて醜いですよねー。
ぷー、くすくす。
成果こそすべてだと社会に出て学ばなかった残念な人なのかなぁ?
母親からももらえるだろうって?
ははは、面白いことを言う人もいるなあ。
それはノーカウントに決まっているだろ。
そもそも女の子枠に入るのか、お前のかーちゃんは。
いや、そんなことはどうでもいい。
大事なのはメイドだ。
メイド以外は大事ではないのだ。