第3話 溺れる者/藁をも掴む

文字数 746文字

 「起きた……」
朝方、ふと目が覚めた。
嗚呼、戻って来たのだ。
夢の中では、この私の存在は無に等しい。
ただ、予知夢の中で視た事が現実で役に立つのは、とても有難い。
隣で黒鷹が寝ている。
可愛い面しやがって。
……早めに起こして、向かわないと。
あの

が危ない。
「黒鷹、起きろ。国を出るぞ」
肩を揺する。が、全く起きる気配がない。
ったく……
「おい、黒鷹。おい!!!黒鷹ぁぁぁあ!!!!!」
ゴスっと勢いで拳骨をひとつブチかます。
「いっだぁぁぁぁぁああ!!!!!」
うぅ……と、頭を抑え涙を抑える。
「お前が起きないのが悪い。それより、仕度をしろ。宿を出るぞ」
「え?もう出るんですか?」
「……?出るけど、まだ何用かあったか?」
無意識に首を傾げる。
何かあったっけか?
「いえ、そうではないのですが……まぁ、忘れて下さい」
なんだコイツ。ホント調子狂うな。
相変わらずの口の悪さ。
自分でも思うが、コイツに限っては仕方がないと思う。
王族だろうが、貴族だろうが知ったこっちゃない。
大体私は、王族に養子として売られたんだからな。
それは、追々語るとしよう。

…………。
……。
「あの、姫。本当にこっちであっているのですか?」
なんだ、黒鷹。もう息を切らしたのか?情けない。
「私が視た通り進んでいる。文句があるなら着いてくんな」
そ、そんなぁ~……とか、言いながらも着いて来るんだから一応感心はする。
どんだけ甘っちょろい男なんだよ、お前は。
「ッ……!??な、なんです?ここ」
闇蟇(やみひき)の巣だ。
道が霧で……闇で見えない。
視界を遮り客を拒む、か。
「黒鷹。私から離れるな」
これは、多分。

私の想像以上に厄介な場所柄だ。

何で私が……と、うんざりした。
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