第三章

文字数 8,083文字

第三章

「泣くなよ。人生には色んなことがあるもんだ。これも一つの節目だと思ってさ、頑張って乗り切ってくれよ。」

杉三が一生懸命励ましても、麟太郎は泣くばかりだった。

「まあ、しょうがないじゃないの。とりあえず、ベートーベンの交響曲七番はもう決まっているんでしょ。それなら、他の人の交響曲をやるとかどう?」

「そうだけどねえ、、、。ありふれたものでは、皆納得してくれないからねえ、、、。」

「だからさあ、モーツァルトの交響曲とかそういう物はどう?」

「いやあ、それも提案したんだけど、もう当の昔に却下されてて。」

「じゃあ、メンデルスゾーンの交響曲は?あれなら、比較的やりやすいみたいだよ。」

「それもだめなんだよ。そんなつまらないのをやって、人を馬鹿にするなって、メンバーさんに怒られてしまった。」

麟太郎は、またビールをがぶ飲みした。

「へえ、そうですか。最近のアマチュアバンドは、メンデルスゾーンでもつまらないというのですか。」

はなしを聞いていたジョチもこれには驚いてしまう。

「でも、聞いたことありますよ。プロのオーケストラの方が、ありふれたプログラムばかりやって、つまらないという苦情が多くて、アマチュアの方が、あまり知られていない作曲家の作品をやってくれるので面白がる人が結構いるんですよね。」

「へえ、例えば?」

「はい、ベートーベンとかモーツァルトのようなものは嫌で、ショスタコーヴィチの交響曲をやってみたり、逆に、バロックより前の、ルネサンス期の古い曲をやりたがるとか。」

「なんだか時代の流れかねえ。変な曲ばっかりやりたがるって。」

「まあねえ、昔は音楽と言うと、貴族とか実業家とか、そういう人に限定されていましたので、庶民は聞く側に専念するしかなかったですしね。それが、庶民でも音楽をやれる時代になってしまったので、そうなると、変なものをやってみたいという気持ちになってしまうんじゃないでしょうか。やっぱり、人間は、他の人よりすごい物をやって、褒められると、どうしても、快感をもってしまうので。」

「そうなんだよなあ。それで、演奏する側も、色んな階級が混じるようになった。それのせいで昔の作曲家が想定してなかった問題がいっぱい生じちゃってさあ、もう、そっちを解決するので、音楽どころじゃなくなっちゃう楽団も、大量にあるんだよ。」

麟太郎はまたため息をついた。そうなると、杉三だけでなくジョチも、この人は、よくあるたくらみを持っているわけではないなと、思い始めた。

「例えばさあ、よく思うんだけど、別に楽器のブランドなんて、無理して統一しなくてもいいと思うんだよねえ。それなのに、なぜかみんな同じブランドでないと嫌がってさ、違うのを持っていると、そのブランドだから悪いって、持っている人を責めまくる。まあ確かに、ブランドによっては、音程に癖がある楽器もあるのは、俺も認めるよ。だけどさ、そんなの気にしてたら、音楽にならないじゃないかっていうのはどうなのかと思うわけ。音楽なんて、十人十色で良いんじゃないかと思うのに、最近は、なんだか統一しろしろでうるさいし、そんな全部同じ音なんてできるわけないと反論したら、怒り出す客もいるし、、、。」

「そうですか。ほんとうに人間というのはどうでも良い事で喧嘩するんですね。今も昔もかわりませんね。」

「その典型例が学校だよな。やっぱり学校は百害あって、一利なしだ!」

麟太郎にしても、こうして自分の愚痴を聞いてくれる人物は、初めてあったような気がした。

「その上俺はさ、水穂には敵だとみなされてしまって、あのブッチャーとか、恵子さんとかに、散々叱られて追い出されるはめになってしまった。俺は単にピアノパートをやってもらいたかっただけなのに、ああして、二人に怒られるとは、俺はやっぱり、音楽家として間違っている所に気がつくのが遅すぎたという事かなあ、、、。」

「まあ、水穂さんに関しては諦めてください。僕も、今の時点で彼を音楽祭に出場させるのは、かわいそう過ぎる気がします。そこは申し訳ないですけど、誰か後任の人材をみつけてください。」

「ああ、結局そうなるのかあ、、、。そうなると、今年のパガニーニはどうしても、ソリス

ト不在で取りやめにしなきゃいけないかあ、、、。みんな、やってみようと言ったら、すご

いやる気を出してくれたんだけどなあ、、、。」

麟太郎はまたビールをあおった。

「へえ、そんなに人気なんかなあ。あの曲。どこが面白いんだかねえ。」

「そうですねえ。それよりもパガニーニ自身が多くの作曲家を魅了していますからねえ。それに便乗して、やっぱり誰もが憧れるんじゃないですか。」

「だって、ただピアノ弾いて、オーケストラと合わせるように改造しただけじゃないか。それなら、本物のバイオリンの方をやればいいのに。」

「だから、みんなあの第18変奏が面白いんだって!そこと、他の変奏の陰険なところとの対比が面白くてやりたくなるんだって!」

と、麟太郎がビールジョッキをガンと置いた。

「あ、確かにそうかもしれませんね。その第18変奏だけ単独で演奏する演奏家も少なくないじゃないですか。でも、マニアックな人の話によると、全曲通して弾かないと、あれは面白くないそうですが、、、。確か、僕の同級生は、人生山あり谷ありを上手く表現できた曲だと言っていたような気がしました。僕はそれだったら、ゴルドベルク変奏曲も同じくらいだと言って対抗した記憶があります。まあ、この問題は好みの問題ですから、解決はしないですが。」

「だろ。何か知らないけど、みんなそういうんだよ。俺たち音楽家からしてみれば、何だそれって気がするんだけど、、、。でも、何かそれも間違いじゃないよなあと最近思うように

なったわけ。だって、音楽の世界なんて、少ない演奏者の椅子を求めて、絶えず戦いが行われている世界だぜ。だから、それを巡って汚い手を使う人も本当にたくさんいる訳。さっき、製鉄所であのおばさんが言っていたけど、俺だってそういう場所を本当にたくさん目撃したし、だからもう、叩きあいは嫌に成ったのよ。」

「はあ、有名になってからそれに気がつくというのも、なんだか皮肉だが、まあ、気がつかないで栄華におぼれちゃう人の方が多くて、僕たちには多大な被害を与えるのに気がつかないよりははるかにましといえる。それなら、僕たちも手伝ってやろうという気になるな。」

麟太郎が正直に本音を言うと、杉三がそれに加担した。

「そうですね。しかし、パガニーニの主題による狂詩曲といいますと、かなり高度な技術がいることも確かなので、そのあたりのピアノ教室では、弾ける人物は得られないでしょう。どこか、音楽学校の教授にでも、聞いて見ましょうか?」

ジョチがそう提案したが杉三はまた揚げ足を取る。

「いや、それはだめだよ。音楽学校の教授なんてみんな馬鹿だから。」

「そうですけど、あの曲はそのくらいの技術を持っている人でないと、弾けないんですよ。」

「だめだめ。音大なんて、苦労を知らないで弾かされるような場所で演奏するような人の演奏はみんな嘘っぱちだ。そもそもな、18変奏と他の変奏の落差の意味を考えろよ。そこを、苦労を知らない人に表現できると思う?やっぱりあの曲は、ものすごい苦労人でなければ、感動的な演奏はできないのさ。」

「そうですけどねえ、やたらに弾けるもんじゃないですからね、、、。」

ジョチと杉三がそういうことを言い合っていると、

「おい兄ちゃん、丁度いいのがいるじゃないか。ほら、この前うちの店に来たあの男の子だよ。親に促されて、焼肉を食べ始めたら、もう音楽学校なんか行きたくないって叫びだしたあの子。」

ビールを持ってきたチャガタイが、そんなことを発言した。

「何!それは本当か!」

思わず、麟太郎が彼の袖を掴んだため、ビール瓶が落っこちて、ガーンという音を立てて粉々に割れた。

「はい、いたんですよ。あまりにもかわいそうだったんで、声をかけることはしませんでしたけど、なんだかものすごく思いつめた様子で、もう人生終わったのではないかと思わせる雰囲気の子でした。もしかしたら、音楽コンクールにでも出場して、ぼろ負けしたのかなとか、俺たちは噂していました。確か、カバンの中にピアノの楽譜が見えたので、専攻楽器はピアノで間違いありません。」

「で、名前はなんと言うんだよ。どこの子だよ!」

チャガタイの説明に、人が変わったように麟太郎は、喋りだした。

「落ち着いてくださいよ。広上さん。敬一、その子が来店したのはいつ頃でした?もし、今年中であれば、予約名簿に記録が残っているかもしれないですよね。そこから電話番号を割り出せば住所がつかめるかも。」

「おう、早くしてくれ!住所がわかったら、すぐにお願いに行こう!」

「何を言ってるんですか。そんなべろべろに酔っ払ったままで訪問したら、絶対に怪しまれますよ。とりあえず、今日はもうここまでにして、訪問は後日にしてください。」

「あ、すまん。あまりにも嬉しくてつい、興奮してしまった。」

そういって、麟太郎は毛のない頭をがりがりかじった。

「広上さんもやっぱり音楽家だね。そして、人間的な一面を残していてくれて嬉しいや。」

ジョチと麟太郎がそうやり取りしているのを見て、杉三が思わずくすりと笑った。

「兄ちゃん、名簿持ってきた。とりあえず、今年の一月から予約者を全部ここに記録してあるんだけど。」

チャガタイが、紺色のリングファイルをテーブルの上に乗せる。客の名を全て記録しておくなんて、随分丁重な飲食店だなあと思われるが、それも、もしかしたら共産主義的なところから来たのかもしれなかった。

「えーと、彼がやってきたのは、今年の三月だ。少なくとも半年以上前ですね。俺、あまりに印象的だったんで、名前もはっきり覚えてますよ。それに変わった苗字だったし。こういう仕事しているとね、いろんな苗字の人がいますから、時に変な苗字の人が来店すると、覚えてしまうんですよね。」

「もったいぶらないで早く教えてくれ。その電話番号から、急いで住所を割り出そう!」

「はいはい。えーと、苗字は桂さん。桂歌丸師匠と同じ文字だと言っていました。で、名前は親の名は殆ど記憶していないのですが、青年の名前はこうじ君と言っていたと思います。お母さんがそういっていました。」

「桂こうじね。で、電話番号は?」

「はい、電話番号は0545、、、。だから、富士市民ということになります。」

麟太郎は、その番号と、青年の名を、急いで手帳に書き加えた。

「ありがとう!急いでタブレットか何かで調べてみるよ!」

本当は、ビール瓶の弁償をしてもらいたかったが、皆そのことはすっかり忘れていた。



一方。

「ほら、せっかく広上さんが持って来てくれたんだから、味わって食べたらどうですか。」

ブッチャーは、水穂にそういうが、それは、マグロの刺身が乗った、一人分の寿司であった。

「どうしても食べなきゃいけないかしら。あたし、まだなんか信用できないところがあるわ。」

恵子さんはまだ心配そうだった。二人は、広上さんに何とか演奏をさせるのをやめてもらうように、一生懸命説得したのである。

「そうですけど、俺は、同じ男として、広上さんのいうことも間違いはないと思います。確かに、音楽業界は八百長の多い世界ですし、それに世界的に有名な指揮者になって、全部の栄光を掴んでしまうと、なんか庶民的なものが恋しくなってしまうというのも、理解できないわけではないですよ。ほら、この製鉄所だって、結構高尚な身分の人が来訪したことがありますが、そういう人たちは大体庶民的なものを懐かしんだりすることが多いじゃないですか。それと同じことだと思いますよ。それじゃないですかね。」

「何よブッチャー、変なところに同情しちゃだめよ。男はそういう理論で納得しちゃうことあるから、変なところに騙されるけど、女はそうじゃないわ。感情さえあればずっと貫いていけるのが女だもの。あたしは、今でも広上さんのことは、敵だと思う。」

ブッチャーは、そういったのだが、恵子さんはまだ疑っていた。

「すみません。今回は僕がしっかり断れなかったばっかりに。この刺身は、ブッチャーさんにあげます。」

水穂は、申し訳なさそうに言った。

「もういいわ。あらさがしをしても仕方ないわよ。敵の残したものを処理するとして、この刺身、三人で食べちゃいましょ!」

ムキになった恵子さんは、気がむしゃくしゃしていたのか、割り箸を三膳持って来て、三人の前に置いた。

「あ、わかりました。じゃあ、それがいいですね。きっと高級なお寿司ですから、思いっきりうまいでしょう。」

ブッチャーは思わず、割り箸を取ってすぐに寿司に食らいついた。

「あ、うまいじゃないですか。これはいけますよ。やっぱり世界的な指揮者の選ぶものですね。やっぱり偉い人は、見るものが違うなあ!」

「何よブッチャー。本当に食べ物のことに関しては正直なんだから。」

恵子さんも刺身を口にするが、

「確かにこれは、高級品だわ。癖がなくておいしい。」

と、答えた。

「ほら、水穂ちゃんも食べちゃって頂戴よ。もう、こういうものはね、捨てるのももったいないし、食べちゃうのが落ちよ。」

「そうですが、とても食べられませんよ。」

水穂はいつも通りの事を口にしたが、

「あら、水穂ちゃんだって、もう血液の成分全部入れ替えたでしょう。杉ちゃんにもらって。だから、もう今までのような過激な反応はしないはずよ。それに、もしかしたら、水穂ちゃんの事を馬鹿にして、わざと食べられないものを持ってきたのかもしれないわ。それじゃあ、嫌味もすごいものよ。だから、一切れだけでも食べてさ、見返してやりなさいよ。」

と、恵子さんは押し掛けるように言った。まあ確かに、理論的に言ったら、ペスト菌と化した免疫細胞はもう除去したわけだから、過激な反応が起こる可能性はない。それは確かにそうだけど、何か、怖くなってしまうのである。

「わかりました。じゃあ、一切れだけ。」

水穂は、割り箸を割って、一切れだけ刺身を取って口に入れた。

「ほら、大丈夫でしょ。もう、血液の成分のことは気にしないで頂戴ね。何でも食べられるんだから、変に食べれない食べれないって暗示はかけないで、バンバン食べてね。」

と、恵子さんは次の、一切れを取ろうとしたが、

「恵子さんちょっと!」

と、ブッチャーの声がして急いで顔を上げた。と同時に、雷鳴のような音が鳴って、

「水穂さん大丈夫ですか!」

ブッチャーが声を掛けるが、返ってくるのは唸る声であった。

「ブッチャー、バケツ持って来て、バケツ!」

「わかりました!」

ブッチャーは矢のように飛び出して、応接室の掃除用具入れに入れてあった金属製のバケツをもって戻ってきた。それを水穂の枕元に置くと、水穂がそれに縋りついて、けたたましい声をあげながら体の中身を出した。はじめは自家中毒になったのかと思ったが、いつまでも腹が雷鳴みたいになり続けるし、吐き続けて止まらないので、自家中毒どころか、まるでコレラにかかったかのように見えてしまった。

「どうしたんですか。いきなりバケツがどうのこうのなんて。」

懍が、ブッチャーの後を追いかけて、四畳半に入ってきた。車いす使用者なので、到着が遅れてしまったのであるが、そのほうが状況を理解するのは早かったようだ。

「薬出してくれますか。こうなったら、記憶を思い出している限り、吐き続けて止まらないと思いますから。」

「わかりました!」

ブッチャーが、水穂の体を無理やりバケツから引き離し、懍は急いで水穂の口に吸い飲みを押し込んだ。それを体から引き抜くと、やっと落ち着いてくれたらしく、ブッチャーの体に支えられたまま、意識をなくしたように眠りだしたのである。

「このまま寝かしてあげましょう。」

恵子さんが、吐瀉物で汚れた口を、濡れタオルで拭いてやり、ブッチャーが静かに布団の上に寝かしつけてやった。

「でもすごいわ。バケツ一杯吐き出してしまうなんて。これでは、全く意味がないじゃないの。」

「前にやっていた、過激な反応とほとんど変わらないですよ。」

ブッチャーも、恵子さんも顔を見合わせてそう言い合った。二人は、ああして大掛かりなことをしても、全く意味がないと知って、がっかりとしてしまう。

「彼が目覚めたら、すぐに水でも飲ませてやってくださいね。これだけ大量の水分が失われると、脱水症状を起こす可能性がありますからね。」

懍は、それを口にしたが、そんなことを発言できるのは懍だけだと、ブッチャーも恵子さんも思ってしまった。

「ああ、水道の冷たい水ではいけないかもしれませんね。体が冷えたらさらに悪いことになりますからね。お湯でも構わないですが、栄養が極度に不足した状態でもありますし、それを考えると葛湯のほうがいいかもしれない。」

懍は、そのままそう続けたが、二人は黙ったまま何も言えなかった。

「二人とも、それではいけませんよ。こんなことで驚いてどうするんですか。いいですか、極論から言えば、戦いはこれからですよ。血液の成分を入れ替えただけで勝利できたなんて全くあり得ません。これからは、本物の免疫と戦わなければなりません。今起きたことは、彼が過去にさんざん受けてきた、厳しい拷問から守ろうとして、体が起こしたことであり、これが、本当の自己免疫です。きっと彼は、過去に無理やり肉魚を食べさせられるという、厳しい拷問を何回も受けてきたんですよ。肉魚によって、体が過激な反応を示すわけですから、当然のごとく、死に至る恐怖だって体験したはずです。今のは、死に至るかもしれない過剰反応を起こす食物を口にしたことで、死に至る恐怖が再燃して、錯乱状態になったんでしょう。これを克服しなければ、健康というものは取り戻せません。でも、そのためには、長い長い時間と体力が必要になりますので、戦う最中に、力尽きることも少なくないですけど。」

そう淡々と説明した懍であったが、ブッチャーも恵子さんも、それが何を意味しているのか、知ることになった。

「もちろん、一人で戦うことは先ずできませんので、かなりの人の協力というものは必要不可欠でしょうが、それは中途半端な態度ですと、軋轢が生じてかえって悪化する原因にもなりますし、ある程度自己を捨てることも必要になります。だから、自信がないようでしたら、先に退却するべきだと思いますが、いかがでしょう。」

確かに、そういうことは、必要十分条件だが、なかなか実現できるものではなかった。むしろ、中途半端な態度から抜けられなくて、両者の主張が通らずに、結局敗北してしまうほうが圧倒的に多く、現代の社会では成功例はまれである。時には、片方が死亡することによって、やっと解決できたという例も多く、それが書籍や映画などの題材にもなったりする。時には、それに基づいた殺人事件まで起きることも多い。

「いえ、俺は最後まで面倒を見ます。姉ちゃんのことで、経験済みですから、多少の事では、驚きません。」

「あたしも、自分が鬱になって、親にずいぶん迷惑かけちゃいましたし、それなら、しっかりと、そばに付き添いますよ。」

ブッチャーも、恵子さんも、いまどきの人には珍しい発言をしたので、懍は驚くと同時に、心強いと思った。二人に向けて、しっかり微笑みかけてこう発言する。

「わかりました。ありがとう。」
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