第6話 兄、登場!

文字数 994文字


 全国高校野球甲子園大会。
 初日。
 第2試合。千葉県代表・凪浜VS長崎県代表・南星
 16:00開始。

 先攻の凪浜を迎え撃つのは南星の1年生エース晴海久遠だ。
 身長171センチ。体重64キロ。右投右打。野球選手としては小柄な部類だが、まだ16
歳の少年である。ここ1、2年で身長も体重もぐんと伸びてゆくだろう。
 そんな体格的なデータよりも注目すべきは地区予選における彼の成績である。対戦相
手をすべて完封で抑えてここまであがってきた。
 武器は140キロ後半のストレートにツーシーム、そして奥行きのあるチェンジアップ
だ。
——初戦の相手チームも完封で抑える!
 久遠は記者の緒方だけではなく、テレビカメラの前でも豪語したが、これは配慮に欠
ける発言としてテレビ局が自主的にカットした。
 しかし——

 凪浜ナインには緒方の口から伝わっている。
 凪浜は燃えていた。
 ナマイキな1年坊が! 目にもの見せてやる!
 トップバッターの花添が右打席で激しく久遠をにらみつける。
「プレイボール!」
 高らかに響く主審の声。
 サイレンが鳴り、注目の試合がはじまった。



「大口叩いたわりにはたいしたことねーな」
 というのが凪浜ナインの感想だ。
 3回表。
 久遠はマウンドで棒立ちになっていた。
 早くも凪浜に7点を献上している。
 初回に4点。
 2回に1点。
 いま3回表のマウンドで2点の追加点を許し、ノーアウト一、二塁のピンチがつづく。
「甲子園のマウンドの傾斜が地元の球場と違ってあわないのかもしれない」
 そういったのは風巻頼我だ。風巻自身もいつもと勝手が違うので得点こそ許さぬが、
得点圏にランナーを出している。
「いまのうち、できるだけ点をとっておいた方がいいかもしれない」
「おいおい、弱気なこというなよ」
 7点ももらっておいてそりゃないぜ、と鳥沢が渋い顔をする。
 ——と、そのときだ。
 三塁側アルプススタンドでざわめきが走った。三塁側は南星の応援席である。
 一塁側ベンチの凪浜ナインがつられて視線を向けた。
「ああッ!!」
 なんと、アルプススタンドに久遠の兄・晴海玲音の姿がある。今夜、大阪ドームで試合
があるので、近くにきていたようだ。
 
 久遠も振り仰いで兄をみた。
 途端に表情が宿る。
 兄・玲音は立ちあがると右膝を曲げて踵を示した。

「ヤバいな、これは」
 風巻が独りごちる。
 久遠が立ち直ろうとしている。



       第7話につづく












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