第2話 島流しの島ルシル

文字数 1,572文字

 夜が明けた。チュンチュン小鳥が泣いている。目を覚ますと、真っ先に納屋の中だとわかった。土埃と硬い草の上で寝転んでいた。

 記憶が正しいなら、島流しの島は、罪人の流刑に一般的なルシル島である。この島はえげつなさでいえば、本国の地下牢以上だった。

 音に聞くルシルはまず、食物を育てる土壌ができていない。鉱山ばかりで、食料は余った僅かな土地で自給自足だから、少ない人口でも生きていける人間はごくわずかとされる。

 それでも、水車のように次々に沸いてくる罪人を肥やしに土地を耕し、採掘と探索に明け暮れる、というのが、噂の一端である。

 ここにきて確定した噂はといえば、空気が汚いということだ。

 別名、ゴミ島。ゴミを廃棄して捨てるなら近海の海を汚染するよりもまずはここだとやっているうちに、島の過半がゴミで埋まっている。

 その独特の臭気に屋内のはずが思わずゲホっと咳き込んだ。

 よく小鳥がくるなと思うも、窓を開けてよく見たら鳥はまだ幼い子供の怪鳥だった。

 虫や、虫の糞を食って生き、汚物全般が好物の怪鳥にはむしろ極楽なんだろう。

 窓を開けてぼおっとそんなことを考えていると、後方のドアがばこんと開いて、筋骨隆々の中年の男が現れた。

「行くぞ囚人。歩きながら説明するから、ついてこい」

 僕は着替えもできずに、駆り出された。朝食は抜きらしい。

 そうして歩く事四半刻。

 男の説明はこうだ。

『食事は基本自給自足。あるものは好きに食っていい。誰のもんでもねえ。ここにいるのは、全員罪人だ。リーダーは俺ことクバリとウォーケンってのがやってるが、基本的につええやつがリーダーだ。殺しも、盗みも自由。だが、仕事をしねえやつはリーダーの俺達が許さねえ。海に沈めてやるから覚悟しとけ』

 聞く話によると、リーダーだけは特例として本国とのパイプ役として優遇されるらしい。大小にかかわらず、それまでの罪が放免になり、王国へ戻れるとのこと。

『山に着いたら仕事の段取りを話す。使えねえやつなら、ん?』

 こちらをみて、二、三瞬きするクバリ。

『おまえ、まさか魔法使えんのか?』

 僕の胴体にくんずほぐれつ絡みついた石の鎖をみて、すぐに察する。この地に住んでいる者で、魔法を知らない者は赤子だけだ。

『バグ石だ。生憎。使えるが使えない』

 すると、クバリは、そうか、と急に興味を失くして、

『使えたら、ここでは奴隷さ。よかったな小僧』

 と、荒くれもの特有の笑いで締めた。

 そんなこって日が暮れて、すっかり月が昇るころまで僕らは掘削と採掘に身を粉にし、月が笑う頃には、帰り道を土地勘だけで帰る他の罪人たちに交じって、初日はそう、途中で力尽きて、土くれの上で倒れた。

 しかし気候は冬が近い。このままでは凍死する。

 カッと全身を赤く上気させ、立ち上がり、総重量が太った子供程もある鎖を断ち切ろうとカチャカチャと震える鎖。

 しかし。

「はっ——はあはっだめだ。ただの石だが、継ぎ目が」

 夜も更けた家の前でそんな悪戦苦闘をする僕を見かねてか、諦めろと、声が投げられる。

「あんたは……とか聞かなくていい。ただの罪人だよ。ただし、あんたのような、ウソっぱちの罪じゃない。重罪だ」

 土を二、三歩踏む。罅の入ったガラス窓の向こうに、ベッドから身を起こす気配。

 黙って続きを待つ。無言の催促とみたか、

「まあ俺の事はいい。俺はもう肺を患ってる。持って十日だ。ラストっつったか。お前は——有名人だ。知ってるよ。こっちにも噂が回る。あのマクイ疑惑のある人間を逃がした。大スクープだ。知らない奴はいない」

 僕は答えない。代わりに、誰にでもなく、もう寝る、外は寒い、と言って。納屋に戻って行った。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

後々記載するにゃ

実は前に出した分を削除してしまったので再投稿にゃ

因みに吾輩は作中で喋る猫として登場するにゃ

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み