証言

文字数 316文字

「爪切り」

 時たま、息子は唐突に何の脈絡もない言葉を紡ぐ。指摘しても不思議そうな顔をするので何の意図もないらしい。たびたび子供の面倒を見てくれる従姉が『辻占い』みたいねと例えた事があった。夕方に辻(交叉点)に立って、通りすがりの人々が話す言葉の内容を元に占う古い占いの一つ。一回り年上の姉は面白がっているようだったが、幼少期特有のものだろうとそっとしておいた。
 ある夏の日、久しぶりに息子が起きている時間帯に帰宅し、夕食を共にする。そして例の独り言。ふと折合が悪い娘の事を思い出す。確か爪は伸びる前にやすりで削っていたはずだ。成人してから滅多に寄り付かなくなった彼女の自室から先日変死体で発見された被疑者の所持品が見つかった。
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