第1話 オセロ(1)

文字数 931文字

あの件以降、表向きの優人と麗華の交際は終わった。そうするよう智晴に促されたのだ。そうすることで家族との関係はある程度修復することに成功した。しかし二人は休日になれば遊びに行き、時にはホテルで数時間過ごすこともあった。その時は最初のデートと同様、智晴と夏帆に協力を仰いだ。
「来週はどこ行きたい?」
 ホテルで二人で横になりながら優人は麗華に声をかけた。
「ごめん、来週は会えないかも」
 こんなことを言われるのは付き合って以来初めてだった。
「何かあるの?誰かと会うの?」
 優人は不安でたまらなかった。自分で知らないところで彼女が何をしているのかだれと会っているのか知りたいという欲に駆られた。最初、彼女のことを知るたびに嬉しかったことの反動がここできたかのように。
それからというもの麗華はしばしば優人の誘いを断るようになった。特にホテルに行こうという      誘いに関しては絶対に断るようになった。そんなとき優人はあることを考えてしまうようになった。「もしかしたら麗華はほかの男とともに時間を過ごしているのではないか」しかしそんなことを聞いてもはぐらかされるに決まっている。優人はどうにか確かめる方法はないかと頭を悩ましていた。
夏も本番に差し掛かった七月の頭、二人は三週間ぶりにデートをしていた。
「久しぶりだね。最近どう?」
「ぼちぼちかなー」
「誰かと会った?どっかいった?」
「束縛強いよ」
 麗華が放った言葉で優人は確信した、麗華には男がいる。なぜそのように感じたのか論理的な説明はできないが。とにかくそう感じてしまった。強いて言うなら彼女の言葉から他のところに行きたいのにという意味が込められているように感じたからだ。しかしそんなことではまだ確固たる証拠とはならない。麗華が用を足しに席を立つと、優人の座っている席の前にはスマホがまだ点灯している状態にあった。今ならパスワードの入力なしに通話履歴などを見れるだろう。だが優人はすぐにそれを手に取ることができなかった。彼女は自分のものだと信じていたい気持ちも優人にはあった。ここで白黒はっきりさせてしまっては自分が彼女を信用していないという証拠にもなってしまう。彼が動けなくなっているうちにやがてスマホの画面は暗転した。
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