3.休養
文字数 1,101文字
“ファンの皆様へ
おはようございます。ぴぽラブのチャキです。急な報告なのですが、暫くおやすみを頂くことになりました。ここ数日体調が思わしくなく、なんとか活動は続けようと頑張っていましたが体調が回復する兆しがありません。ライブ、イベントを楽しみにしてくれていたファンの方々には大変申し訳ありません。いつまでとは明確にお伝えできませんが、必ず戻ってきます。それまで待っていてくれるとうれしいです。
チャキより”
えっ、と思ってた以上に大きな声が出た。
ライブ当日、ぴぽラブのSNSに投稿されていた千秋からのメッセージを読み、ここがオフィスということを忘れてしまうくらい取り乱してしまった。
やっぱりここ数日の謎の投稿は何か意味があったんだ。体調不良って?どうしたんだろう。何も聞いてない。心配だ。どうしよう。
頭のなか嫌な想像で埋め尽くされていく。今すぐにでも目の前のパソコンの電源を切って千秋のもとへ飛んでいきたい。そんな気持ちを抑えて何度も画面の右下に出ている時間を見ながら上の空で仕事を続けた。定時になるや否や椅子から立ち上がりオフィスをあとにした。
向かう先はもちろん千秋の家だ。
千秋の家は私の職場から歩いて20分程、オフィス街を抜けて静かな住宅街の中にあるアパートに住んでいる。二階建てのアパートで、何とか壮なんて名前が似合いそうな古びた建物だった。
ピンポーン。
千秋の部屋のチャイムを鳴らした。少し待っても室内から人の気配は感じられなかった。
ピンポーン。
もう一度試しに押してみる。やはり返事はない。もしかしたら病院に行っているのかもしれない。
はぁ、とため息と同時に足元に目を向けた。
真っ赤だった。
ひっ、咄嗟に声が出た。
自分が立っている場所に、血溜まりができていた。一瞬自分から流れた血かと思ったが既に少し乾きかけていた。
千秋の部屋の前に血溜まり。
今まで想像した中で最悪なイメージが頭の中に流れてきた。ぶわっと背中に嫌な汗が吹き出す。さっき千秋に送ったメッセージの返事はまだきていない。
状況がつかめないせいでどんどん嫌な妄想ばかりが広がっていく。共通の知り合いと言ったら母ぐらいしかいない。
千秋は上京してから私や母とコンタクトをとることを避けるようになった。
特に母とは頑なに連絡を取ろうとしない。甘えん坊だった千秋は、母の声を聞くと故郷に帰りたくなってしまうみたいだった。
母に千秋から連絡が入っているか可能性は低いけれどとりあえず電話してみよう。
プルルル プルルル プルルル
留守電に切り替わることもなくずっとなり続ける。
鼓動とコール音がやたらと体の中に響き不快なリズムを刻んでいた。
おはようございます。ぴぽラブのチャキです。急な報告なのですが、暫くおやすみを頂くことになりました。ここ数日体調が思わしくなく、なんとか活動は続けようと頑張っていましたが体調が回復する兆しがありません。ライブ、イベントを楽しみにしてくれていたファンの方々には大変申し訳ありません。いつまでとは明確にお伝えできませんが、必ず戻ってきます。それまで待っていてくれるとうれしいです。
チャキより”
えっ、と思ってた以上に大きな声が出た。
ライブ当日、ぴぽラブのSNSに投稿されていた千秋からのメッセージを読み、ここがオフィスということを忘れてしまうくらい取り乱してしまった。
やっぱりここ数日の謎の投稿は何か意味があったんだ。体調不良って?どうしたんだろう。何も聞いてない。心配だ。どうしよう。
頭のなか嫌な想像で埋め尽くされていく。今すぐにでも目の前のパソコンの電源を切って千秋のもとへ飛んでいきたい。そんな気持ちを抑えて何度も画面の右下に出ている時間を見ながら上の空で仕事を続けた。定時になるや否や椅子から立ち上がりオフィスをあとにした。
向かう先はもちろん千秋の家だ。
千秋の家は私の職場から歩いて20分程、オフィス街を抜けて静かな住宅街の中にあるアパートに住んでいる。二階建てのアパートで、何とか壮なんて名前が似合いそうな古びた建物だった。
ピンポーン。
千秋の部屋のチャイムを鳴らした。少し待っても室内から人の気配は感じられなかった。
ピンポーン。
もう一度試しに押してみる。やはり返事はない。もしかしたら病院に行っているのかもしれない。
はぁ、とため息と同時に足元に目を向けた。
真っ赤だった。
ひっ、咄嗟に声が出た。
自分が立っている場所に、血溜まりができていた。一瞬自分から流れた血かと思ったが既に少し乾きかけていた。
千秋の部屋の前に血溜まり。
今まで想像した中で最悪なイメージが頭の中に流れてきた。ぶわっと背中に嫌な汗が吹き出す。さっき千秋に送ったメッセージの返事はまだきていない。
状況がつかめないせいでどんどん嫌な妄想ばかりが広がっていく。共通の知り合いと言ったら母ぐらいしかいない。
千秋は上京してから私や母とコンタクトをとることを避けるようになった。
特に母とは頑なに連絡を取ろうとしない。甘えん坊だった千秋は、母の声を聞くと故郷に帰りたくなってしまうみたいだった。
母に千秋から連絡が入っているか可能性は低いけれどとりあえず電話してみよう。
プルルル プルルル プルルル
留守電に切り替わることもなくずっとなり続ける。
鼓動とコール音がやたらと体の中に響き不快なリズムを刻んでいた。