パニュキス プロローグ

文字数 665文字

「パニュキス」がおさめられているのは、いまの日本では岩波少年文庫で、つまり書店や図書館で捜そうと思ったら「児童文学」のコーナーになります。
 でも、初めてこのおはなしを読んだとき、まだ子どもだった私はとても驚き、よく理解できませんでした。だいたい、いきなり、作者であるファージョンさんがフランスの詩人アンドレ・シェニエの詩を読んで着想を得たという回想から始まるんです。
「あんどれ・しぇにえってだれ?」←小学生の私の心の声
 告白すると、いまだにアンドレ・シェニエって誰なのか、よくわかっていない私です。笑

 だいたい「わたし」ってだれ?って話です。地の文に作品の作者が出てきてコメントするということの意味も、小さい私はまだよくわかっていなかったんです。
 ましてその作者に「これはわたしのつくったおはなしです」とはっきり言われてしまうなんて、受け入れられませんでした。
 ですから……

 これは、子どもに読ませるべき作品ではないと思います。
 子どもの本の最後に載っているのを、お父さんやお母さんや、通りがかりの私がちらっと見て、
(あら)
と思ってこっそり読んでみる、という読みかたが、いいと思います。
 そのときも、最初の説明はずーっととばして、一行あけていよいよおはなしの始まる直前の数行から読むのがいいと思います。
「……パニュキスという名まえだけを、そして、その女の子が五つだということだけを、わたしたちは知っています。けれども、そのあとのことは、だれの、いつの、どこの話なのでしょう」

 ねえ、本当に。
 だれの、いつの、どこの話なのでしょう。
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