第1話

文字数 1,302文字

起)主人公の颯太は、港小学校の6年生。しかしながら、彼は現在、学校に通えていない。難病を患い、病院に入院しているのだ。そんな彼の日々の楽しみは自分の推しのアイドルであるメリルの活躍を見ることだった。ある日、颯太はふとテレビをつけ、普段全く見ないニュースを見ると、一人の女性が交通事故に遭って亡くなったと報道された。颯太はそのニュースが気になり、スマホを使って詳しく調べると亡くなった女性はアイドルのメリルだったことが分かる。

承)メリルという何よりも大事な存在を失い、絶望の淵に立たせられる颯太。しかしながら、その絶望はすぐに消えることとなる。なんとメリルが颯太の病室に突然現れたのだ。颯太はわけがわからず動揺するが、メリルはなぜ颯太の前に現れたのか説明をした。メリルは颯太しか見ることができない霊となり、病気の颯太を励ますために現れたのだ。そんなメリルは毎日、颯太を励ましに来てくれた。最初は気まずかった颯太もだんだんとメリルと仲良くなり、退院したら、一緒に原宿でメリルの好物のクレープを食べに行こうと約束する。

転)メリルとの楽しい日々をすごす颯太。しかしながら、急に病気の症状が悪化してしまい、急遽3日後に死亡するリスクがある手術を受けることとなる。そんな不安な颯太の前にもメリルは来てくれて、「颯太なら大丈夫、一緒にクレープを食べに行こう」と励ましに来てくれた。そして、手術の前日、メリルはいつものように颯太の前に現れ、1枚の手紙を渡して、手術が終わったらこの手紙を読んでとお願いする。颯太はその手紙をベッドの下に入れ、手術を受ける覚悟を決める。

結)そして、手術当日。颯太は緊張するも落ち着いて手術室に運ばれ、麻酔をかけられる。そして、数時間に及ぶ手術は無事成功し、颯太は病気を克服することができた。しかしながら、手術後、メリルは颯太の前に全く現れなくしまった。颯太は病院を退院することになるが、ベッドの下にしまったメリルからの手紙を思い出し、読むと「これを見ているということは手術が成功したのですね。本当に良かった。実は私は嘘をつきました。実は私は霊ではなく死神の使者だったのです。私は死神と契約して、死にそうな人のもとに運ばれ、その人が死ねば人間としてよみがえることができることになっていました。つまり、あなたが死ぬことで私は人間として生き返ることが出来たのです。その代わり、あなたが元気になることで私は完全に消えることになりました。私は颯太の優しさに触れ、颯太に元気になってもらいたいと思いました。颯太はもう私がいなくても立派に生きていけます。それと原宿のパフェの約束は守ることができなくてごめんね。メリル」と書いてあり、手紙の文字は少しにじんでいた。彼女は死んだ後もアイドルとして偶像を演じ続け、自分の命よりも颯太の命を優先したのだ。颯太は自分が全く彼女の心の支えになれなかったことを後悔し、悲しみにあふれるも彼女の分までしっかり生きようと決意をする。そして颯太は退院するとすぐに原宿に行き、彼女の墓にクレープをお供えするとともに、彼女にもっと素直になっていいんだよとエールを送るのであった。
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