詩小説『走ることをやめた雪列車』3分であの頃の恋へ。

エピソード文字数 687文字

走ることをやめた雪列車

冷めてしまったミルクティを、
ふたりで分け合うような恋だった。

駅の入り口にある自販機で、
まだ温かいそれを手にした時には、

まだ、こんなことになるとは、
思わなかった。

容赦なく降り続く雪は、
長い月日を経て、
再会を果たした僕等を、
拒むように積もる。

列車の運休を告げるアナウンスが、
こじんまりとした静かな駅に、
鳴り響く。

真夜中に足止めをくらった僕等。
なすすべもなかった。

君の真っ白な肌は乾いて、
鼻を赤くしていた。

長いマフラーに顔を埋めて、
手袋に膨らむ指先を重ねた。

駅に設置されたストーブは
頭から湯気を作り、
強まり、弱まり、赤く燃えていた。

何度も脳裏をよぎった言葉。
引き返そうかとは、言えなかった。

そんなこと言ってしまったら、
もう、二度と、会えない気がして。

だからこうして立ち往生。
幼すぎる恋だった。

こんな時どんな言葉があればいいのか?
どこを探しても見つからず、
僕は言葉を失くす。

降り積もる雪を溶かせるはずだった。
温かい灯火のような言葉で。

月に一度、互いに交わしてきた、
手紙で細くも繋がってきた。

今だって、握りあう手の平で、
繋がりを信じあった。

長旅に疲れた君は、
僕の肩で、眠ってしまった。

そんな、痛いような記憶。

恋なんてコンビニでガムを買うくらい、
手軽になった。

恋なんて味がしなくなったら、吐き出すくらい容易くなった。

恋なんて包み紙からはがし取り、風船膨らまして、アスファルトの上、へばりつく。軽はずみになった。

雪は溶けてしまった。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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