第4話 国際会議

文字数 1,188文字

 同じような議論は地球上の各地で繰り広げられた。数日後、各国の宇宙研究者でウェブ会議を行った。最も過激な意見は、U国から出された。
「あの高度にある以上、ロケットを撃ち込む以外に彼らを知る手立てはない」
 誰が聞いても手荒なやり方であり、もし相手がそれを攻撃と受け取った場合の報復を考えると恐ろしい。
「それはやはり危険だ」
 R国とT国の研究者が声を上げた。
「もしも彼らに対する攻撃とみなされた場合の報復は、かなりおそろしいものになるだろう」
「いや、まだあそこに何もない可能性も残っている。そのミサイルは地球に落ちてくることはまずないだろうが、宇宙空間にあなた方のミサイルが漂い続けるのは危険だ」
 U国がロケットと表現したものを、ミサイルと言い換えるT国。U国以外の研究者は聞き流したが、U国の担当者は黙っていない。
「攻撃を加える意図は断じてない。なのでミサイルではない」
「相手へのメッセージだというのか、撃ち込むだけのロケットが?」
 R国はロケットと表現したが、批判的であることには変わりない。
「これにより、例の波形の元が実態を伴うものかどうかが明確になるのだ。そして実態があった場合、それは私たちに有害なものかどうかがはっきりする」
「もともと敵意のなかったものが、こちらに敵意を持ってしまった場合は、どう責任をとるつもりか?」
 N国からの質問だった。これはU国以外の全ての国が関心を持っていた。
「責任は政治家がとる。我々はあくまで宇宙の科学者だ。知りたいことを純粋に探究する。あなた方もそうしたいはずだ。私たちの提案に文句をつけているが、私たちが得たデータは皆が欲しいはずだ。実際にこれを行うかどうかの最終判断は国であり、国同士の偉い人が決めればよい。それには従うしかない。しかし、提案しなければ始まらない。科学者として、研究者として、もっとも行うべき提案を、すべての国の科学者が合同で行うからこそ意味があるのだ」
 U国の代表者にそういわれ、滝山はうなった。正論すぎる。これでは慎重派として振る舞いながら反U国を科学の世界でも貫いているR国やT国も反対しづらいだろう。
「撃ち込むべきロケットは、推進力の点から核燃料を使う必要がある」
 U国の提案に賛成せざるを得ない空気の中、U国は具体的な観測方法を続々と提案してきた。
「それが謎の物体に衝突し、爆発した際に発せられるであろう電磁波を地球上と軍事衛星とでしっかり観測する。各国にはその役割を担っていただきたい」
 U国主導の大掛かりなプロジェクトである。これだけの規模の宇宙観測を行うには、世界中の知が集まらなければならない。そしてそれは、誰かが、どこかの国が、リーダーシップをとってまとめていくことになる。U国の戦略と実行力を目の当たりにした大滝は、まだまだこの地球はU国主導で物事が運ぶような仕組みを維持していることを実感した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み