朝の恒例とパリサイ派の役員
文字数 1,729文字
私が、この会社に入って一週間が立った。朝九時に出勤すると、社訓を代表して誰かが読み上げて、みんなも読み上げる。
・「神と隣人を愛しなさい。」
・「自分にしてほしいように、他の人にもしなさい。」
・「悪を憎みなさい」
この三つだ。なんというか他の会社の社訓と雰囲気が大分違う。今日はマタイ先輩が当番だ。
「では、今日も社訓を読み上げていきます。一つ神と隣人を愛しなさい。」
皆が声を合わせて唱える。
「神と隣人を愛しなさい」
「一つ自分のしてほしいように他の人にもしなさい。」
「自分のしてほしいように他の人にもしなさい。」
「一つ、悪を憎みなさい。」
「悪を憎みなさい。」
それが終わると当番のマタイさんは手を組む。それを見た他の社員も手を組む。背広の男たちが手を組んでいる姿は異様だ。私も手を組んで祈りに参加する。
「天の父よ。今日も私たちを見守ってくださり感謝いたします。ペテロさんとヨハネさんの仕事が上手くいくようあなたの力をお貸しください。あなたの王国が到来しますようにアーメン。」
「アーメン。」
「さて、今日の予定ですが…‥。」
マタイ先輩が今日の仕事について、報告事項について発表していく。実は祈りの間少し目を開けたら、みんな真剣に祈る中イスカリオテ先輩はスマホをいじっていた。時々あの人はスマホで勤務時間にFXを見ていたりPCで株を見ていたりする。
報告が終わり。私は昨日の事務の残りに取り掛かっていった。
役員会議
一〇時を回ったころイエス部長が会議を終えて帰ってきた。
今日は朝からパリサイ会議が行われている。所謂役員会議というやつだ。役員と部長が参加している。殆ど五〇代、六〇代の役員の中、三〇代のイエス部長は異例の出世だ。
ヨハネ先輩曰く。イエス部長の出世は異例中の異例らしい。そしてパリサイ派つまり役員会の人たちは彼の出世を良く思っていないようだ。そしてイエス部長自身もよく意見が衝突しているということがあるようだ。若くして昇進するのも大変なのだなと入ったばかりの私は思ってしまった。
私の商社は主に、海外からの機械部品や国内の部品を輸出入している商社だ。部品以外にもレアメタルなども扱っている。なので取引先は大手の会社が多い。
今日もメーカーと打ち合わせが入っている。
「神の子よ。仕事は覚えられましたか。」
そういうと私にそっとコーヒーを差し出す。私はまさか部長がコーヒーを入れてるれるとは思わず。驚いてしまう。
「はっハイおかげさまで。書類の整理や処理は大体覚えました。」
「その調子です我が娘よ。祝福がありますように。」
最近はブラック企業があるけれどうちの会社について言えば完全にホワイトだ。人間関係もいいし(変な先輩も多いけど)。私は運がいい。若干の変な社風は目をつぶろう。互いを愛し合いなさいだ。あれ?今ふと社訓が‥‥‥。私も影響されだしてるのかな?
一方役員会では……。
「イエスの出世はこの会社設立以来例がない。」
役員の一人が思い空気の中口を開く。
「くそっ。アイツは大した学歴もないくせにっ、たがだか大工のせがれじゃないか。」
他の役員も苛立ちを露にする。
「しかし、彼の会社への恩恵を社長は高く評価している。社長は会社にとって神のようなものだ。社長の意向を無視すると我々の立場が危ない。」
パリサイ派と部長クラスのグループ、つまりイエス派は対立している。
「何か彼に弱点があれば……。」
「しかし、彼は幸運で人格も申し分がありません。」
部屋にため息が漏れる。万策尽きたか。その刹那ドアのがギガ開く。一人の背広の男が入ってくる。
「まだ会議中だぞ。」
「イエス部長のことでお困りなのでは?」
「君はイスカリオテ君だな。何をしに来た?」
「イエス部長の欠点を見つけることが出来たら私に幾ら払いますか?」
「君は直属の上司を売るつもりかね。」
イスカリオテはにやりと笑い。
「彼は完璧な人間です。そう簡単に落ち度は見いだせない。ですから罠にはめるのです。」
「罠?」
イスカリオテはパリサイ派の役員たちに語り始めた。
・「神と隣人を愛しなさい。」
・「自分にしてほしいように、他の人にもしなさい。」
・「悪を憎みなさい」
この三つだ。なんというか他の会社の社訓と雰囲気が大分違う。今日はマタイ先輩が当番だ。
「では、今日も社訓を読み上げていきます。一つ神と隣人を愛しなさい。」
皆が声を合わせて唱える。
「神と隣人を愛しなさい」
「一つ自分のしてほしいように他の人にもしなさい。」
「自分のしてほしいように他の人にもしなさい。」
「一つ、悪を憎みなさい。」
「悪を憎みなさい。」
それが終わると当番のマタイさんは手を組む。それを見た他の社員も手を組む。背広の男たちが手を組んでいる姿は異様だ。私も手を組んで祈りに参加する。
「天の父よ。今日も私たちを見守ってくださり感謝いたします。ペテロさんとヨハネさんの仕事が上手くいくようあなたの力をお貸しください。あなたの王国が到来しますようにアーメン。」
「アーメン。」
「さて、今日の予定ですが…‥。」
マタイ先輩が今日の仕事について、報告事項について発表していく。実は祈りの間少し目を開けたら、みんな真剣に祈る中イスカリオテ先輩はスマホをいじっていた。時々あの人はスマホで勤務時間にFXを見ていたりPCで株を見ていたりする。
報告が終わり。私は昨日の事務の残りに取り掛かっていった。
役員会議
一〇時を回ったころイエス部長が会議を終えて帰ってきた。
今日は朝からパリサイ会議が行われている。所謂役員会議というやつだ。役員と部長が参加している。殆ど五〇代、六〇代の役員の中、三〇代のイエス部長は異例の出世だ。
ヨハネ先輩曰く。イエス部長の出世は異例中の異例らしい。そしてパリサイ派つまり役員会の人たちは彼の出世を良く思っていないようだ。そしてイエス部長自身もよく意見が衝突しているということがあるようだ。若くして昇進するのも大変なのだなと入ったばかりの私は思ってしまった。
私の商社は主に、海外からの機械部品や国内の部品を輸出入している商社だ。部品以外にもレアメタルなども扱っている。なので取引先は大手の会社が多い。
今日もメーカーと打ち合わせが入っている。
「神の子よ。仕事は覚えられましたか。」
そういうと私にそっとコーヒーを差し出す。私はまさか部長がコーヒーを入れてるれるとは思わず。驚いてしまう。
「はっハイおかげさまで。書類の整理や処理は大体覚えました。」
「その調子です我が娘よ。祝福がありますように。」
最近はブラック企業があるけれどうちの会社について言えば完全にホワイトだ。人間関係もいいし(変な先輩も多いけど)。私は運がいい。若干の変な社風は目をつぶろう。互いを愛し合いなさいだ。あれ?今ふと社訓が‥‥‥。私も影響されだしてるのかな?
一方役員会では……。
「イエスの出世はこの会社設立以来例がない。」
役員の一人が思い空気の中口を開く。
「くそっ。アイツは大した学歴もないくせにっ、たがだか大工のせがれじゃないか。」
他の役員も苛立ちを露にする。
「しかし、彼の会社への恩恵を社長は高く評価している。社長は会社にとって神のようなものだ。社長の意向を無視すると我々の立場が危ない。」
パリサイ派と部長クラスのグループ、つまりイエス派は対立している。
「何か彼に弱点があれば……。」
「しかし、彼は幸運で人格も申し分がありません。」
部屋にため息が漏れる。万策尽きたか。その刹那ドアのがギガ開く。一人の背広の男が入ってくる。
「まだ会議中だぞ。」
「イエス部長のことでお困りなのでは?」
「君はイスカリオテ君だな。何をしに来た?」
「イエス部長の欠点を見つけることが出来たら私に幾ら払いますか?」
「君は直属の上司を売るつもりかね。」
イスカリオテはにやりと笑い。
「彼は完璧な人間です。そう簡単に落ち度は見いだせない。ですから罠にはめるのです。」
「罠?」
イスカリオテはパリサイ派の役員たちに語り始めた。