インスタント

文字数 473文字

「ラーメンを待つ三分って、長いよな」
リビングテーブルの上には、お湯を注いで蓋をしたカップラーメンが二つ、そしてテーブルの前には、それが出来上がるのを待つ男が二人並んでいる。
「何かしてれば?」
「何かするには短いんだよ」
「たしかにセックスは無理だな」
俺は恋人の冗談に、昨日の夜を思い出してしまい、焦って真面目に答えてしまう。
「あ、当たり前だろ! 昼間から何言ってんだよ!」
「じゃあ、キスは?」
明らかに俺の反応を面白がって、にやにやしながらそんなことを言ってくる。
悔しいので、俺はお返しにかわいいことでも言ってドキドキさせてやろうと思った。
「……三分もしたら、キスだけじゃすまなくなるだろ」
恋人は急に真顔になって俺をじっと見つめてきた。
やばい! その気にさせてしまったみたいだ。俺はラーメンが食べたいんだよ。
ピピピピピピピピ……!
床の上に押し倒された時、ちょうどキッチンタイマーが鳴った。
「タイマー鳴ったよ! ラーメン伸びちゃうよ!」
「二人で食えば、伸びたのも美味いよ」
どうやらやめる気は無いらしい。
伸びたラーメンにありつけるのは、当分先になりそうだ。





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