第2話(8)

エピソード文字数 2,658文字

「??? ???」

 だ、だれ? このお目目パッチリな、元気一杯のアクティブ系に感じる子は誰だ?

「この人は、フュルちゃんっ。あたしに勇者(ゆーしゃ)さんの力をくれた、金堂(きんどう)フュルちゃんだよー」
「『勇者さんの力』ってことは、元勇者なのか。なんで地球に……?」
「レミア先生(せんせえ)に用事があるから、気配を辿って様子を見に来たがよ。そしたら『戦場空間』があったき、カッコよく空から侵入したがよね」

 茶色い髪をボブにしている金堂さんはニッカリ笑い、左手を挙げて俺らの周囲にシールドを展開する。
 レミアの同類イコール、この人も桁外れに強い。ということは、俺のためにやってくれたようだ。

「ワシは、状況がわからんきね。えーと…………安全地帯? を用意したき、教えてつかぁさい」
「オ、オンナ! オレラをムシスルナ!」
「タタカエ! サンゴウのカタキを、ウタセロ!」
「あ~、それはあとにしてや。こっちが気になるがよ」

 圧倒的な力の差が、あるからなのだろう。彼女は軽ーくあしらい、こちらをチラ見する。

「レミア先生。この先生は誰なが?」
「この男の子は、色紙ゆーせー君だよー。あのね――」

 レミアは彼女なりに手短に(ホントここ重要)、俺の素性と俺らの関係を伝えた。
 なお所要時間は、2分7秒。レミアちゃんクオリティなので短くまとめてもこの時間になり、その間に死亡寸前による恐怖心がなくなってしまいましたとさ。

「あははっ、面白いコトになってるがやね。どうりで帰ってこないワケぜよっ」

 金堂さんは、手をバシバシ叩いて大笑い。ひーひー言って思う存分笑うと、こっちに顔を向けてきた。

「ワシの親友先生が、お世話になっちょります。ワシも先生とおなじ十六歳だから、気軽にフュルって呼んで欲しいがよ」
「う、うん。じゃあ、俺も呼び捨てでいいよ」
「いや、ワシは『先生』を付けたいき、優星先生って呼ばせてもらいます。坂本先生はあの時、よく先生を使ってたきね」

 坂本先生? 坂本先生って、どなた?

「ゆーせー君ゆーせー君。その人は、地球にいた坂本龍馬さんだよー」
「俺の故郷の英雄!? 何故アンタらが知ってるの!?

 文化価値観が似ていても、住んでる人間はまるで違うはず。どうなってるの?

「あれは、半年前だったにゃぁ。仲間先生が、『遠見(えんけん)』と『遠聴(えんちょう)』――遠くを見れて遠くの音を聴ける魔法を使って、ワシらは一緒に色んな世界を覗きよったがよ」
「そしたら、この日本に繋がってねっ。ちょーど坂本龍馬さんのドラマが始まったから、全員で観たんだよー」

 コイツら、魔法使って何やってんだ。先代の魔法使い、枕を濡らしてるぞ。

「初めはつまらなく感じたけど、段々はまっちゃって。番組が終わる頃には、坂本龍馬先生の虜になったがよ」
「それからフュルちゃんは、一人称(いちにんしょー)を龍馬さんと同じにしてねっ。龍馬さんみたいな言葉を使うよーになったんだよーっ」

 あーね。だから土佐弁だったんだ。

「使うと言っても、よく知らないからにゃぁ。一部と、語尾だけながやけどね」

 フュルはこう注釈を入れ、ズィィ。こちらの顔を覗き込む。

「時に、優星先生。さっき『故郷』って言ってたけど、先生は土佐の出身かえ?」
「そう、高知県の出身だよ。11歳まで住んでました」

 山の幸と海の幸が豊富な、南国。ユズさんや鍋焼きラーメンが有名なあの土佐の国が、我が故郷だ(鍋焼きラーメンは『須崎市(すさきし)』発祥の名物で、その名の通り土鍋に入ったラーメン。鶏肉やちくわなど少々珍しいモノがトッピングされているのですが、あっさり系のスープによく合うので是非召し上がってみてくださいませ)。

「ほ、ほいたら土佐弁を喋れるが? 使いこなせるが?」
「それなりにね。ただ俺が住んでたのは『南国市(なんこくし)』ってとこで、自分も含め周りはそこまで濃い方言を使ってなかったよ」

『~するき』(するよ)や『~しよった』(していた)は頻繁に用いたが、『へんしも』(早く)や『~ねや』(『~しよったねや』などという形で用いる、していたよ、って意味の言葉。※県外の人にはコレが『にゃぁ』と聞こえるらしい)などは使用しなかった。
 南国市は山間部に比べて若い人が多く、しかもその若い人が集まりやすい新築マンション暮らしでしたからね。俺は中級者? くらいで、両親の実家――田舎の方に行ったら、ハナテになる時が度々あります。あと土佐弁には二つ種類があって、自分は『幡多(はた)』地域で使われる『幡多弁』はあんまり分かりませんですはい。

「っっ、それでも生粋は凄いぜよ! なにか喋ってや!」
「そ、そうだね……。これから皆で出掛けるってゆうても、もう遅うなっちゅうろ? それにアイツは『ごくどう』やき、呼んだちこんで」

 戦場で、土佐弁を披露。俺、なにやってんだろ。

「にゅむ? フュルちゃん、なんて言ったのかな?」
「さあ? 優星先生、標準語に直して欲しいがよ」
「これから皆で出かけるって言っても、時間が遅いでしょ? それにアイツは面倒臭がりだから、呼んでも来ないよ。こんな感じかな」

 戦場で、土佐弁を解説。俺、ホントなにやってんだろ。

「ふえー。全然わかんなかったよー」
「これが、真の土佐弁……! 感動したがぜよ!」

 フュルはプルプル震え、ガシィィィィィッ。それはもう力強く、両手で俺の右手を握った。

「これからは優星先生ではなく、師匠と呼ばせてもらうき! ワシは時々遊びに来るから、土佐弁を教えてつかぁさい!」
「お、おう。お安い御用だよ」

 魔王使いの次は、勇者のお師匠になった。これから職業欄に、なんて書こうかな?
 っとそうそう、『つかぁさい』とは『ください』のことっス。これは中国地方でも使われてるみたいだけど、高知でも使用されているのだ。

「やったぜよっ、今日は最高の日ぜよ! ワシはすこぶる機嫌がいいから、本気を見せちゃりますっ」
「い、いけないよーフュルちゃんっ。本気を出しちゃうと、次元さんが崩壊(ほーかい)しちゃいますー」

 すげぇな。止める理由が普通じゃない。

「おっと、そうやったにゃぁ。そしたら、抑えめで戦っちゃるわ」

 フュルは周りにあるシールドを消し、脚を肩幅に開いて呼吸を一回。集中力を軽めに整え、控えめに戦うための準備が整った。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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