第24話 懲罰(1)

文字数 619文字

 信長は溜息をついた。

 また仙千代か……
またも、仙千代……
あいつは何もせずにはおられぬのか……

 小姓達の諍いがあったという報を聞き、
嫌な予感がしたが、やはり仙千代がかんでいたと知り、
信長は脇息に身を預けつつ、二度三度、溜息を吐いた。

 信長は仙千代の小姓としての成長に日々、目を細めていた。
秘しても隠せぬ竹丸のような鋭利さとは違い、
穏やかな聡明さがあって、
竹丸がつい誰もが頼りたくなるような放射を放っているとするなら、
仙千代は皆が前に押し出したくなるような温かな気を纏っていた。

 二人を織田家の若手家臣の中心に育て上げると考えている
信長の思いを知ってか知らずか、
仙千代は定期的に事を起こしてくれる。

 しかも相手はあの連中か……
出来は悪いが、親の力が侮れぬ……

 小姓は大人の世界の写し絵で、様々な背景がある。
仙千代に対しては私欲も私欲で大いにあると認めはするが、
仙千代という有望極まる逸材を切ることはできないと決めていて、
少々面倒くさい話になったと信長は嘆息した。

 報告にやって来たのは小姓頭と、
喧嘩を収拾させた竹丸で、二人が事と次第を信長に伝えた。

 「このあと、天守で若殿に話を伝え、
如何されるか、お考えを聞いておく。御苦労」

 多忙な一日を終え、
さて湯殿で疲れを癒そうと思った矢先、これだった。
 信重の小姓が絡んでいることは事実で、この際、
手並みを拝見でもないが元服し初陣も済ませた総領息子に
沙汰を任せてみるのも悪くないと信長は思った。





 

 
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