第2話 前衛的ヘアデザイナー

文字数 811文字

○下町の前衛的ヴィダルサッスーン「シャトー•ドウ•三ノ輪」 10:00am 開店早々
リンゴーン♫
いらっしゃいませ。
朝イチのお客さんに営業スマイルを浮かべる店主のピエール三ノ輪。
朝イチの十時から予約していた藪本です。

今日は、大事な日なので宜しくお願いします。

早速、席に着くOL藪本。
大事な日?

差し支えなければ、伺えますか?

今日はね、午后から紀尾井町のホテルニュー小谷でお見合いなの。

だから、朝から私自身気負ってるわ。


東京の一等地でお見合い。

相手の男性は、グレードの高い方なんでしょうな。

相手の男性は、トヨデンのGPS技術者の方で、年収は1000万近いの。

私には、千載一遇の結婚のチャンスだわ。

だから、先生にインパクトの強いヘアスタイルに仕上げて欲しいのよ。

インパクトの強い。
そうよ。

彼程の男性なら、女性にとって高値の国産マツタケ。

言いよる女性も多いはずよ。

だから、一番印象に残るようなヘアスタイルにして欲しいのよ。

たしか、先生は若い頃パリで修行されたとか。

分かりました。 

では、コロナ禍でステイホームが長かったので、南国を思わせる様な「トロピカルモーニング」なヘアスタイルに変身させてみせましょう。

ガーッ

(ヘアドライヤーの音)

早速、作業に取り掛かるピエール三ノ輪。

それから、十分経過。

あっ、先生。

ワタシの頭に装着しようとしている、それはもしかして..

生花の剣山?

何をおっしゃいます。

聖なるスワード•マウンテンです。

構わず、藪本の顎紐を締め付け剣山を頭に固定するピエール三ノ輪。
よしっ、これで準備よしっと。
つかつかと冷蔵庫に向かうピエール三ノ輪。
あーっ、先生。

そのフルーツは何?

パイナップルですよ。
持って来た冷え冷えのパイナップルをグサッと剣山に差し込むピエール三ノ輪。
先生、頭から甘い汁が垂れて来て…何か頭が重いし。

このヘアスタイル、奇抜過ぎないかしら。

インパクトは、最強ですよ。

何しろ、結婚生活は忍耐しつつも甘くないとね。

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