溺れない花(水仙と水草のわかり合えない話)
文字数 346文字
水仙の花が泉を覗き込むと、水草が薄黄色い楚々とした花を咲かせていた。
「あの花はどうして溺れないのだろう。重たい水に閉じ込められて、繊細な花弁も軸も潰されてしまいそうなのに」
水仙は軽やかな風に揺られ、しっかりと張った根に力を入れて背筋を伸ばした。
「あの花はきっと、罰として苦しみの中に閉ざされているのだ」
水草の花は揺れる水面の向こうの水仙を見上げた。
「あの花はどうして乾き切ってしまわないのだろう。優しく体を支えてくれる水もないのに、どうして立っていられるのだろう」
水と一緒に水草は揺れる。泉全体が同じリズムでゆらゆらと踊っている。
「あの花はきっと孤独だろう。硬く、強く、独りで立たなければならないから」
見つめ合う二輪の花。その間にある境界面を水鳥が乱し、互いの影は散り散りになった。
「あの花はどうして溺れないのだろう。重たい水に閉じ込められて、繊細な花弁も軸も潰されてしまいそうなのに」
水仙は軽やかな風に揺られ、しっかりと張った根に力を入れて背筋を伸ばした。
「あの花はきっと、罰として苦しみの中に閉ざされているのだ」
水草の花は揺れる水面の向こうの水仙を見上げた。
「あの花はどうして乾き切ってしまわないのだろう。優しく体を支えてくれる水もないのに、どうして立っていられるのだろう」
水と一緒に水草は揺れる。泉全体が同じリズムでゆらゆらと踊っている。
「あの花はきっと孤独だろう。硬く、強く、独りで立たなければならないから」
見つめ合う二輪の花。その間にある境界面を水鳥が乱し、互いの影は散り散りになった。