第1話

文字数 1,273文字

ゆなはよるがすき。
だって、だいすきなミーとおはなしできる、まほうのじかんだから。

ミーはおばあちゃんがプレゼントしてくれた、ねこのぬいぐるみ。
いつもいっしょだったのに、「こんなボロボロ。もう、いらないわね」って、ママにすてられた。

さみしくって、かなしくて、まいにち、ないてばっかりだった。
でもね、あるよる、おふとんにはいったら、だれかが、ゆなをよんだの。

”ゆなちゃん、ゆなちゃん!”

「だれ?」

”ミーよ”

!!!

「ミー!? ほんとうにミーなの?」

すっごく、コウフンした。
だって、ゆな、ミーとはなればなれになって、すっごくさみしかったんだもん。

それなのにミーったら、あわてたように、”しーっ!”って。

”ゆなちゃん、おおきなこえをだしちゃダメ。
まほうがとけちゃう”

「まほう?」

ききかえしたら、ミーが、こんどはやさしくいった。

”ちいさなこえでおはなしして。
ちゃんときこえるから。
そして、ミーのこと、かんがえて”

だからね、ゆな、いっしょうけんめい、ミーのことをかんがえたの。
しろくて、ふわふわで、くるくるみずいろおめめがかわいいミー。
ミーにいっぱいいっぱおはなししたなぁ。

ようちえんでおえかきしてほめられたこと、りっくんにいじわるされたこと、せらちゃんにいもうとができたこと、ピアノのれんしゅうしなくて、ママにおこられたこと。
そんなこと。

「ゆなね、ママなんてきらいなの。おこりんぼうだし、ミーのこともすてちゃうし」

まほうがとけないように、ちいさなちいさなこえでいったら、ミーがかなしそうなこえでつぶやいた。

”ゆなちゃん、ミーもずっといっしょにいたかった。
でもね……。
ミーのからだはボロボロで、ゆなちゃんにだっこされると、からだじゅうがいたかったの”

えっ?

”だから、ミー、かみさまにおねがいしたの。
もう、ボロボロのからだはいりません。
かわりに、ゆなちゃんとおしゃべりできる、こえをくださいって。
ママはわるくない。きらいにならないで”

「でもさ、ママはずるいし、おこってばっかだよ」

”ママね、ミーをすてるとき、ないてたんだよ。
ゆなちゃんごめんねって。
だから、おこってばっかりだけど、ゆるしてあげて”

「うーん」

”それよりね。
ミーはゆなちゃんとおしゃべりできるようになってうれしいの。
これから、よるはずっといっしょ。
きょうはどんなことがあった?
おしえて”

だからゆなね、いっしょうけんめいおはなししたの。
ようちえんでクロッカスのみずさいばいをしたこと、マコちゃんにおべんとうのハンバーグをはんぶんあげたこと。
かわりにソーセージをもらったこと。

ミーはときどき、

”にゃーっ”

って、あくびしたけど、ちゃんときいてくれた。

”ゆなちゃん、マコちゃんとなかよしだね。
ミー、ちょっとうらやましい。
そして、なんだかねむくなっちゃった”

「ええ? もう?」

”だって、ミー、ねこだもん。
また、おしゃべりしよう。
あしたはミーのおはなしもきいてね”

「うん。ミーはいま、どこにすんでるの?」

”ふふふ、またあしたね。
おやすみ、ゆなちゃん”

「おやすみ、ミー」

まほうのじかんは、またあした。
おやすみなさい。


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