第1話
文字数 2,749文字
とあるまちはずれに
とある少年(しょうねん)がいました。
少年のなまえは、ユキト。
ユキトは
ともだちとあそぶことは
大好(だいす)きだったのですが、ちかごろは、アプリやゲームばかりでしたし、おにごっこやかくれんぼは、もう、やりつくしてしまい、ほかに、たのしいことはないかと、さがすような、毎日(まいにち)でした。
そんな、とある月明(つきあ)かりがきれいな、よるの日(ひ)、ユキトはねむるまえに、とどくか、とどかないか分かりませんでしたが、かみさまに、こころをあつくして、言(い)ったのでした。
「かみさま、かみさま、あしたは、たのしいとくべつな1日(いちにち)になりますように」
そうして、まもなくするとあったかい布団(ふとん)のなかで、ユキトはねむってしまいました。
ねむっていると、はじめは、くやらみにいることにきづきました。しだいに、くらやみのなかから、トンネルをぬけるように、とおくから、ひかりがさしてきました。
さらにあるいていき、くらやみのトンネルをぬけると、少年の目(め)にはうつくしいそうげんが見(み)えました。
たのしくなってきて、ユキトはそうげんで、はしったり、とんだり、はねたりしました。
「本当(ほんとう)にきれいだな、うわっ、からだもなんだかかるいやあ」
まわりをみわたしてみると、ペガサスや天使(てんし)、翼(つばさ)のはえたライオンなどもいるのが分かりました。ユキトは、だんだんふしぎになって、1人つぶやきました。
「そういえば、ここはどこだろう」
そして
ユキトは1人の天使にきいてみました。
「てんしさん、てんしさん。ここはどこですか?」
てんしは、ちゅうでくるりと1回転(かいてん)してから、言いました。
「ここはゆめのくに、ゆめのくにだよ。」
ユキトは、ハッとしました。そうか、ぼくは夢(ゆめ)のなかにいるんだ、と。
それからユキトは翼(つばさ)のはえたライオンにきいてみました。
「なにか、おもしろいことはない?」
ライオンはあくびを1度(いちど)してから、言いました。
「ああ、ひがしのもりのなかにある、どうくつに行(い)くと、きっと、たのしいことがまっているよ」
ユキトは、ライオンに向(む)かって、声(こえ)たかだかと言いました。
「ありがとう、ライオンさん。ぼくいってみるよ」
ライオンがはじめは、はずかしそうに、かおをかいてから、やがて背中(せなか)をだして言いました。
「じゃあ、ぼくの背中に乗(の)っていいよ。どうくつまで案内(あんない)するよ」
ユキトは、ますます楽(たの)しい気持(きも)ちになって、つばさのはえたライオンの背に乗りました。
ライオンは声を大(おお)きくして言いました。
「いくよ。しっかりつかまってて」
すると、ライオンはゆめのくにを、とりのように、りゅうのように、てんしのように、きらきらと、とびはじめました。
「わあ~~、ほんとにすごいや!」
ユキトはこうふんして、さけびました。とちゅうで、クリスタルのお城(しろ)やにじいろのすべりだいなど、いろんな楽しそうで、すてきな場所(ばしょ)をとおりすぎていきましたが、ユキトは森(もり)のどうくつに、行きたくて、しかたがありませんでした。
そうして、ようやく、森のどうくつが見えてきました。森は7色にかがやいている、ふしぎな森でした。森のうえをすこし、とんでいったあと、ライオンがぐるりぐるりとしだいに、おりていきました。それから、ていねいにユキトを背中から、おろして言いました。
「ぼくの出番(でばん)はここまで。ユキトなら、きっと、見つけられるはずだよ」
そう言って、また、ライオンは森の木々(きぎ)をかわしながら、空にでて、とびたっていきました。
どうくつは、ほうせきのように、色んな色でかがやいておりました。
「さあ、いってみよう!ここにはぼくがさがしているものがあるんだ!」
ユキトは、こころをおどらせて、どうくつのなかに入っていきました。
どうくつのなかに入(はい)っていくと、くらやみがつづきました。まるで、さいしょのくらやみのトンネルのようでした。ユキトは、すこしだけ、こわくなってしまいましたが、ユキトは思(おも)いました。
「あのライオンさんがウソをつくわけない!ぼくにも、わかる、ここにはだいじなものが、かくされているんだ!」
ユキトは、みちのくらやみのなかを、ずんずん、ずんずんとあるいていきました。しばらく、ずんずんとあるいていくと、おや、ほたるのようなひかりがみえました。ユキトは、そのひかりにむかって、はしっていきました。そうして、そのひかりに手をのばし、てのひらで、たいせつに、そのひかりをのせました。はじめは、かがやいていて、目があけられないほどでしたが、だんだん、なれてきました。ようやく、しょうたいがわかったのでした。そのしょうたいは、ひかりかがやく石(いし)でした。その石には
「サネソワノエカ」
と、カタカナでかかれておりました。
ユキトは、そのコトバを目でおうようにとなえてみました。すると、コトバがふしぎなひかりをはなちました。2かい、3かいと、となえていくと、なおいっそうに、ひかりかがやきました。こうして、ユキトがこころのそこからとなえたときに、石はたいようのようにかがやいてから、かたちをかえて、うつくしい鳥(とり)にかわりました。
そうして美(うつく)しい鳥がいいました。
「ユキト、ふういんをといてくれて、ありがとう。ユキト、だいじなこたえは、いつでも、じぶんのおくふかくにあるんだよ。せんそうは、おくふかいじぶんをわすれているから、おきるんだ」
ユキトは、あまりの美しさに、感動(かんどう)して、なみだをながしておりました。なにも、言葉(ことば)がでませんでした。
美しい鳥がまたいいました。
「生(い)きものには、いのちにきざまれている名前(なまえ)があるんだ。その名前こそ、もっともかがやくちからだよ」
ユキトは、美しい鳥に言いました。
「ぼくにも、名前があるんだね」
美しい鳥が、ダイヤモンドのような光(ひかり)をこぼし、げんそうてきに、一度(いちど)あたりをまわってから、言いました。
「そうだよ。ユキトにも、名前があるんだ。その名前は、ユキトをいっぱいしあわせにするよ。ユキト、いつでも、ともだちをだいじにして。ぼくはいつでもそばにいるから」
美しい鳥がそういい終(お)えると、ユキトは夢から目をさましました。目からは、涙(なみだ)があふれていて、いつもの白(しろ)い天井(てんじょう)は、涙で、にじんでいました。
それからというもの
ユキトは
ふしぎなコトバのちからと
なまえのちから
ゆうじょうのちからを
いつもたいせつにするようになりました。
そうして、ユキトは
たのしいとくべつな日々(ひび)を
すごすようになりました。
完