11.確率に過去を変える力はない:前編
文字数 2,331文字
レン子先輩はそう告げると、今度は僕を指差した。
どうやら三人のパターンもあるらしい。
これ以上複雑になったら、果たして理解しきれるのだろうか?
不安になる僕をよそに、石橋先輩とギャル子は相変わらずだ。
レン子先輩は僕らをいつもの席に座らせると、説明を始めた。
誰もが思ったことをズバリ指摘したギャル子に、レン子先輩も頷く。
なんとなく、目を見あわせる僕ら三人。
別に実際処刑されるわけではないのに、どうにも居心地が悪かった。
パラドックス問題なら勝ち目があるかも――なんて思って訊ねた僕は、その時点で負けていたのかもしれない。
レン子先輩は真顔で答える。
最も自信のないステータスである。
思えば、僕は昔からすこぶる運が悪かった。
こんな根暗な性格になったのだって、そもそもそれが原因なのだ。
頑張っても結果は出ず、やることはすべて裏目に出て、小中高と楽しい時間なんてなかった。
――むしろ今、やっと少しだけ、楽しさを感じているくらいだ。
顔に出していないつもりだったのに言い当てられて、僕はビクリと震えてしまった。
すぐにバレるのは、やはり同類だからか。
どうやら、話はまだ続いているらしい。
それは困る。
なんとか続けようと問いかけると、レン子先輩は首で否定した。
僕も落ちついて考えてみる。
三人のうちふたりが処刑される、すべてのパターンはこうだ。
A 僕と石橋先輩が処刑
B 僕とギャル子が処刑
C 石橋先輩とギャル子が処刑
処刑されるひとりが石橋先輩の場合AとCの可能性があり、ギャル子の場合BとCの可能性がある。ひとつには絞れないのだ。
ムンクの叫びのようなポーズをとったギャル子は、それでも諦めない。
そう、あと処刑されるのは、残ったうちのどちらかひとり。
逆に言えば、生き残るのもどちらかひとりということになる。
そこで僕は、ふと気づいた。
自分でもまだ整理しきれていない感情を、口に出しながらまとめていく。
身悶えし出すギャル子を横目に、僕は続けた。
石橋先輩は首を傾げる。
――僕も。
本人が認めてくれたから、安心して続ける。
(続く)
Q.幹太が抱いた違和感の理由は?
ぜひ考えてみてください。