地球・生命
文字数 2,237文字
地球などの惑星は、微惑星と呼ばれる小天体の衝突合体で生まれましたが、冥王代の太陽系には、この微惑星が数多く残っていました。特に45億年前には、大きな微惑星が地球に衝突し、そこから分裂した破片が再び集まって、地球の周囲を公転する衛星が生まれました。そう、これが月です。また、微惑星には多くの水が含まれており、地球が「水の惑星」に成る切っ掛けを与えてくれました。地球型惑星と総称される水星・金星・地球・火星には、地表が岩石で出来ているという共通点があります。岩石は、鉱物という物理化学的に安定した結晶で出来ていますが、地球最古の鉱物であるジルコンは、光り方が金剛石と似ており、擬似ダイヤの原料にも使われます。熱いマグマが冷却して岩石に成る一方、相次ぐ火山爆発によって大気が形成され、その中に含まれる水蒸気が状態変化・降水して海洋を作りました。私達人間にとっても極めて重大な御縁である、水の物語です。
太古始生代は「生物が始まった時代」という意味で、遅くとも38億年前には、この星に生命が誕生したようです。地球最初の生物は、宇宙から微惑星に乗ってやって来たのか、それとも無生物から自然発生したのか…?
「自然科学の発達で、私達は宗教的神話に頼らなくても、世界の創成を説明できるようになって来たけれど、それでも、人類が把握している元素は宇宙の4%程度で、残りの22%は正体不明の暗黒物質、そして74%は謎のダークエネルギーという組成が、人工衛星の観測で明らかになっているわ。解読すべき事は、きっとまだ多いわね…」
「それに、時間も空間も無い状態から宇宙が誕生したり、無生物から最古の生命が自然発生したりするのは、要するに『無』から『有』が生じているわけで、本来ならば科学的にあり得ないはずの現象です。そうした、人間には不可能な例外的事象を可能にする因果として、例えば神の存在を仮定するのは、必ずしも迷信とは言えないと、私は思いますよ」
「宇宙誕生の瞬間は、核爆発の中心部に近い状態だと考えられる…もし、科学が更に発達して、人類の技術で宇宙を創造できるようになったら、人間も『神』とやらに成れるのかしらね…?」
地球の原始大気は、二酸化炭素で出来ていましたが、藍藻類という原核生物(核を持たない単細胞生物)の光合成によって酸素が作られ、私達が生存できる地球環境を用意してくれたのです。現在、私達の経済活動が気候システムなどの地球環境を変動させていますが、生存のために大気圏を変化させたのは、実は人類が初めてではなく、遥か太古の生物だったのです。
地球が進化の実験の場とするならば、この実験の再現性はあるのだろうか。宇宙のどこかに地球と同じような惑星が存在している可能性は否定されていない。地球の進化同様に、人間と同じような人類が誕生し、同じような文明を発展させているのだろうか。つまり、地球の歴史が人類の歴史を規定しているのだろうか、と考えると何とも判断が難しくなる。
地球上のすべての生物が自然環境にそれなりに適応しているというよりも、大気と地球上の生物との相互作用による進化の結果が現在の地球大気であり、生物である。ならば、生物としての人間も地球環境に適応した存在である。相互作用とは、生物が自然環境に適応しているだけでなく、自然環境をより都合のよい環境に改変しているのである。
「地球と風土」抜粋・編集
原核細胞生物は、この藍藻類と細菌類に分けられます。地球大気の酸素を作ってくれた藍藻は、植物細胞に入り込んで葉緑体に進化し、現在も光合成の仕事を担ってくれています。また、真核生物の呼吸を担うミトコンドリアも、その起源は「好気性細菌」という原核生物だったと考えられています。このように、太古の原核生物が、私達の真核細胞で共棲している仮説を「細胞内共生説」と呼び、高校の生物基礎科目でも学ぶと思います。
「生物は伝統的に、動物界と植物界に大別されるけれど、近年の分類学では、図表のような5種類に分けられているわ。菌類を植物、原生類を動物に含める場合もあるわね。細菌より更に小さいのがウィルスで、遺伝核酸を持ってはいるけれど、他生物の細胞に寄生しないと生殖できない境界的存在よ」
始生代に続く原生代は、急激な寒冷化によって、地球全体が「雪玉」のように凍結してしまう氷河時代でしたが、そうした環境変動に対峙しながら真核生物・多細胞生物が生まれ、植物界と動物界が分化し始めました。原生代末期のエディアカラ・ベンド生物群を経て、古生代カンブリア紀には生命が爆発的に多様化しますが、それはまた受難の始まりでもあり、その後のオルドビス紀・デボン紀・ペルム紀、そして中生代の三畳紀・白亜紀に、合わせて5件の大量絶滅が引き起こされました。