(三)-6

文字数 297文字

 数馬はさらに二歩下がった。さすがに引きながら剣撃を繰り出してくるとは予想しておらず、虚を突かれた格好になった。
 やむを得ず両手で刀を握り、右内の方へ向けた。
 ちょうどそのとき、「待たせた」と谷川左内が現れて数馬の隣に来て刀を右内へと向けた。そして「お主は、黒井右内殿か」と訪ねた。
 数馬は左内の方を見た。その名前に聞き覚えがあったからだ。
 南部藩で剣術修行をしていた頃、数馬はさらに修行を積みたいと考えていた。そのときの師範に紹介されたのが、黒井右内康郎であった。当時右内は旗本神保家に仕えていたが、その後江戸で各藩の藩士の師範を務めており、南部藩の江戸屋敷にも来て剣術を教えていた。

(続く)
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