プレシャス

文字数 921文字

さて、単刀直入に結果から報告して貰おうか。
前回まで好調でした未殺人囚777ですが、深度20にて潜行が停滞。
わずかしか進展は見られません。

未殺人囚565は深度18。
未殺人囚457は深度19にて停滞。
ご期待いただいていたのに結果が出せず申し訳ありません。
ふむ、やはり深度20前後が壁のようだね。
だが逆に言えばそこを突破すれば、「プレシャス」に近づけるということだ。
こうしている間にも世界は疲弊している。
一刻も早く最大深度に到達して、プレシャスを手に入れねばならぬのだ。
そう、最大深度……、深層意識よりもさらに深きところ。
集合的無意識にまで達した先にある輝けるプレシャスをこの手に収めねばならぬ!
所長。
一人、この一ヶ月でいちじるしい成果を収めている者が居ます。
ほぉ……、それは興味深いね。
一体誰だねそれは。
未殺人囚No.808。
まだ少女ではありますが、深度1から深度19にまで最速で到達。
しかもよく見られる精神の衰弱も見られず、深度20突破も間近かと思われます。
それは大いに期待出来そうだ。
サポートを出来る限りおこないなさい。
それにともなう予算も都合を付けよう。
その子がプレシャスにたどり着けるのを楽しみにしているよ。
はっ……。
では、次回の報告を期待している。
…………。
……。
これで良いのだろうか。
未殺人囚808は真摯に自分の闇と向き合っている。
だが、我々はそれをていよく利用し、純真を踏みにじることしかしていない。
彼女は希望の未来を見上げているが、我々は深淵の底しか見えていない……。
そんな彼女にしてあげられることは、可能な限り負担を軽減させてあげることだけだ。
彼女のバディとして、私は、ボクは、彼女をサポートするしかない。
……堀田さん、未殺人囚No.808の潜行準備が整いました。
ああ、ありがとう。
すぐに行く。
ボクはそのまま潜行室に向かうと、自分のダイバーカプセルに身を沈めた。
もう、未殺人囚808は深度20に挑んでいるところだろう。
ボクに出来ることはバディとして、彼女のサポートに徹することだ。
そう、彼女が心を許すあのぬいぐるみとして……。
そうだ、自分の可能性を信じろ!
キミの見すえる希望が、未来を切り開くんだ!
To be continued
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登場人物紹介

深層意識の水底を目指して潜り続ける主人公
未殺人囚No.808

バディ

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