第6話 水軍の長の娘
文字数 598文字
彼の経験ではここで人々は大いに驚き、恐縮するものだ。
が、梨華はまるでひるまない。
「王子さまならなおのこと、体を鍛えなきゃ。ヘタレじゃ国を背負う王さまになれないわよ」
「へ、へ、ヘタレじゃと~~~ !?」
もはやアストア伯の顔は真っ赤、血圧急上昇で卒倒しそうである。
「王族に向かって何という口のきき方を──」
「べーつに王族なんて珍しくもないわ。うちの母さまだって羅紗 国の王女だもの。普段は忘れ去られているけど」
二人のやり取りを聞いていたリシャールが楽し気な笑い声をたてた。
「じいの負けだね。あなたの言う通りです、お嬢さん」
ふふん、と笑み返すと、梨華は、あ、と思い出したように口元に手を当てた。
「いっけない、この騒ぎですっかり忘れてた。早く戻らなくちゃ。梨奈が心配してるわ」
くるりと踵を返し、兄に声をかける。
「帰りましょ、兄さま」
「夕食の時間にはもう間に合わないけどね」
勇利は軽く肩をすくめ、妹と二人で走り出す。その背中にリシャールが呼びかける。
「待って!」
肩越しに振り返る梨華に、
「じいの失礼はお詫びします。もう一度会って、きちんとお礼を言わせてください。あなたの名は? どこに行けば会えますか?」
梨華はちょっと考えこんでから、
「港に羅紗水軍の船が停泊しているわ。そこの旗艦に来て。あたしの名は梨華。水軍の長 の娘よ」
それだけ答えると、異国の少女は一目散に埠頭の方角へと駆けていった。
が、梨華はまるでひるまない。
「王子さまならなおのこと、体を鍛えなきゃ。ヘタレじゃ国を背負う王さまになれないわよ」
「へ、へ、ヘタレじゃと~~~ !?」
もはやアストア伯の顔は真っ赤、血圧急上昇で卒倒しそうである。
「王族に向かって何という口のきき方を──」
「べーつに王族なんて珍しくもないわ。うちの母さまだって
二人のやり取りを聞いていたリシャールが楽し気な笑い声をたてた。
「じいの負けだね。あなたの言う通りです、お嬢さん」
ふふん、と笑み返すと、梨華は、あ、と思い出したように口元に手を当てた。
「いっけない、この騒ぎですっかり忘れてた。早く戻らなくちゃ。梨奈が心配してるわ」
くるりと踵を返し、兄に声をかける。
「帰りましょ、兄さま」
「夕食の時間にはもう間に合わないけどね」
勇利は軽く肩をすくめ、妹と二人で走り出す。その背中にリシャールが呼びかける。
「待って!」
肩越しに振り返る梨華に、
「じいの失礼はお詫びします。もう一度会って、きちんとお礼を言わせてください。あなたの名は? どこに行けば会えますか?」
梨華はちょっと考えこんでから、
「港に羅紗水軍の船が停泊しているわ。そこの旗艦に来て。あたしの名は梨華。水軍の
それだけ答えると、異国の少女は一目散に埠頭の方角へと駆けていった。