37話  【変】急がば、まわれ「瀬田の唐橋」

文字数 1,001文字

お前ら、「急がば、まわれ」いうことわざは知っとるか?
そのぐらいは知ってるよ。
急ぐのなら危険な道を行かず、回り道でも安全な道を行けってことですよね。

そのとおりじゃ。

じゃあ、その危険な道・安全な道がどこのことかは知っとるか?

は?
このことわざ、架空の話かなにかじゃなかったんですか?

違うのう。

これは「急ぐのなら琵琶湖を船便で行くのがいいが、琵琶湖の天気が荒れているときは危険じゃし、またかえって時間がかかることもあるけえ、その南側の橋を渡っていった方がええ」いう話なんよ。

マジかっ!?

ああ。

で、その琵琶湖の南岸にかかっておった橋こそ、「瀬田の唐橋」のことなんよ。

これがそうじゃ!

いまでもあるんですか!?

おう、あるで。

もっともいまでは鉄筋コンクリートの橋に代わっておるがな。

ちなみにここでは、昔、化け物退治の話もあったんじゃが、

それは知っとるか?

いえ……。
化け物退治の専門家も知らんか?
わかんねえな……。

いけんのう。

ほいじゃあ、「俵藤太の百足退治」いうたらわかるかの。

ああ、それなら聞いたことがありますね。
たしか龍神が大百足にやられて、俵藤太に助けを求めたっていう話だったか?

おう。それよ、それ。

もともとは瀬田の唐橋に大蛇が寝転んでおったんで、誰も渡れなかったところ、俵藤太だけが気にせず、大蛇を踏んづけて渡ったんじゃ。

そしたらその夜、若い娘が俵藤太のもとを訪れて、こう言うんじゃ。

「私は昼間の大蛇です。あなたほどのお方なら、われわれ龍神一族を苦しめている大百足を退治できるでしょう。その百足は山を七巻半もする大きなものなのです。どうかお助け下さい!」とな。

で、俵藤太が見事、大百足を退治したと?

そういうわけじゃ。

なので、瀬田の唐橋にはその伝承をもとにした寺や神社、

またそのイラストなんかが飾られとるんよ。

これらがそうじゃ!

マジだ!

当たり前じゃ。

ちなみにこの話、落語では、また違うオチがあるんじゃが、それは知っとるかの?

どんなのです?

それはな。

「山を七巻き半と聞けばすごいが、実は八巻き(鉢巻)にちょっと足りない」というものじゃな。

これは古典落語の「矢橋船」からのもんじゃ。

……なんでそんなことまで知ってるんです?
勉強したけえな。
落語まで勉強するな!
そんなわけで、観光地ではないものの、ことわざや化け物退治伝説、果ては落語の元ネタになっている「瀬田の唐橋」、みなさんも機会があればぜひ一度訪れてみてつかあさい!

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登場人物紹介

今岡英二(天使)


いまや「小説のキャラよりキャラが立っている」でおなじみの、同コラボノベルの作者。

行動力の化け物。

昔バンド活動をやっていたときは音楽漬けの生活をしていたが、

作家/ライターの生活に移ってからは本漬けの日々を送っている。

そのわりには動き回ることを止めないのはなぜなのか。

目下のところ、それは謎である。


「物書きが自分の足で情報を探さんようになったらおしまいじゃ(笑)」とは本人の弁。


今岡英二(悪魔)


悪魔イラストの割りに、根が優しく義理堅い人情派。広島生まれ・広島育ちの根っからのカープファンだが、だからといって他の野球ファンを貶めることはない。野球好きに貴賎はないというのが信条。


「三食食えて野球が見られる。これ以上の幸せがあろうか……。あとはこれでまたカープが優勝してくれりゃあ、言うことなしじゃ……」とは作者のコメント。


今岡英二(お守り)


歴史オタク・読書オタク・漫画オタク・勉強オタクな今岡英二の変態担当、作家・ライター担当。自身の小説キャラを辟易とさせるなど、悪魔よりも悪魔っぽい存在。


「なんでそんなものまで見るんだ!」「ふつうそんなところなんか行きませんよ!」とキャラにつっこまれても、「勉強のためじゃけえの」と言えば大抵のことは許されると思っているなど、余計に性質が悪い。


ニコル・クロムウェル(Nicol=Cromwell)


「Dr.ニコルの検死FILE」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役A。紳士然とした丁寧な語り口だが、作者に対してはたまに辛辣な物言いを吐く。たぶんストレスがたまっているんだね。


武松(ぶしょう)


「大宋退魔伝」の主人公。

作者・今岡英二のつっこみ役B。そろそろ「左近ちゃん 見参!」の三成にでもつっこみ役を代わってもらいたいと思っているが、同作のキャラアイコンが家紋なので却下され、最近やさぐれ気味。きっとストレスがたまっているんだね。


石田三成(いしだ・みつなり)


「左近ちゃん 見参!」の主人公。

同作ではいいツッコミ役を果たしていたが、作者の「キャラアイコンにしっくりくるのがなかったけえ、家紋にした」という一言のせいで、ここでは活躍の場を与えられないという憂き目に遭う。ごめんな。


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