37話 【変】急がば、まわれ「瀬田の唐橋」
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そのとおりじゃ。
じゃあ、その危険な道・安全な道がどこのことかは知っとるか?
違うのう。
これは「急ぐのなら琵琶湖を船便で行くのがいいが、琵琶湖の天気が荒れているときは危険じゃし、またかえって時間がかかることもあるけえ、その南側の橋を渡っていった方がええ」いう話なんよ。
ああ。
で、その琵琶湖の南岸にかかっておった橋こそ、「瀬田の唐橋」のことなんよ。
これがそうじゃ!
おう、あるで。
もっともいまでは鉄筋コンクリートの橋に代わっておるがな。
ちなみにここでは、昔、化け物退治の話もあったんじゃが、
それは知っとるか?
いけんのう。
ほいじゃあ、「俵藤太の百足退治」いうたらわかるかの。
おう。それよ、それ。
もともとは瀬田の唐橋に大蛇が寝転んでおったんで、誰も渡れなかったところ、俵藤太だけが気にせず、大蛇を踏んづけて渡ったんじゃ。
そしたらその夜、若い娘が俵藤太のもとを訪れて、こう言うんじゃ。
「私は昼間の大蛇です。あなたほどのお方なら、われわれ龍神一族を苦しめている大百足を退治できるでしょう。その百足は山を七巻半もする大きなものなのです。どうかお助け下さい!」とな。
そういうわけじゃ。
なので、瀬田の唐橋にはその伝承をもとにした寺や神社、
またそのイラストなんかが飾られとるんよ。
これらがそうじゃ!
当たり前じゃ。
ちなみにこの話、落語では、また違うオチがあるんじゃが、それは知っとるかの?
それはな。
「山を七巻き半と聞けばすごいが、実は八巻き(鉢巻)にちょっと足りない」というものじゃな。
これは古典落語の「矢橋船」からのもんじゃ。