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エピソード文字数 482文字

(わらわに遠慮などいらぬ。男にならねばいけない理由があったのであろう)

 紅は動揺し、視線を泳がせた。

(そなたは女なのじゃ。もう女として生きるがよい。上様もそれを望んでおられる)

 紅は目に涙を浮かべ、首を左右に振った。大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる。

(そなたこそが、まことの正室なのじゃ)

 私は紅に背を向け、着物を脱いだ。
 紅の着ていた半着と袴を身に付け、斎藤道三から賜った斎藤家の家紋が入った短刀で、長い黒髪を紅と同じ長さに切り落とす。

「於濃の方様!何をなさるおつもりですか!」

 私は和紙の上に切り落とした髪を乗せた。短くした髪をひとつに束ね、いつも紅がしているように、ポニーテールにし後ろで結わえた。

(これは斎藤道三より賜りし短刀じゃ。そなたが持っていて下さい)

「於濃の方様!どこに行かれるおつもりですか!」

(紅殿の馬と、刀を拝借致します)

「馬と……刀……?まさか……!?」

 私は紅に真っ直ぐ視線を向ける。
 もうこれで、紅に2度と逢うことはないだろう。

 万感の想いで紅を見つめた。紅の美しい姿が涙で霞む。
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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